KxR

□思惑
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「う゛ぉっ!!?」

という妙な叫び声と共にどすん、と後ろでベッドに人が倒れ込む音がした。

キールは読んでいた書物にしおりを挟み、ベッドの上で震えながらうずくまっている人物に声をかけた。

「何してるんだ?」

「足、つった…」

両手で片足を押さえながら、苦痛に顔を歪めるリッドの姿。

途端に呆れきった表情に変わるキール。

「馬鹿だな。見せてみろよ」
「あ!馬鹿っ、触るなって……いてててっ!」

他人に触れられた事で余計に増した痛みと格闘しながら、涼しい顔をした目の前の男を思い切り睨みつけるリッド。
その目には涙まで浮かんでいる。

そんなささやかな抗議をチラと横目で見て、キールは慌てた様にすぐさま視線をリッドの足へと戻す。

ことのほか真面目に診てくれている(ような気がする‥)キールに、リッドは文句の言葉を胸の内に収めた。


「ま、すぐに治るだろ」

「ああ、おれもそう思うぜ。別に大したことねーよ…っていうか、いつまで撫でてんだよ」

手を離す気配のないキールに、リッドは足の少しづつ退いてきている足の痛みとはまた別に顔をしかめる。

足の上を行ったり来たりを繰り返すキールの手が、思いのほか優しくてリッドは色んな意味で途方にくれた。

「治った。いいからもう離せよ」

「…そうか」

少し残念そうなその手が離れ、本の元へと戻っていくキール。
その後ろ姿を見て、リッドは笑いが込み上げてきた。

「耳、赤いぜ。キール」

「うるさいな!」

それは照れ隠しか、また別の思惑の為か。


end.

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