KxR

□熱
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「リッド。寝るなら、髪ぐらいちゃんと乾かしてからにしろよ。シーツが濡れるだろ」

呆れた様なキールの非難の声が、相部屋の幼馴染みの元へと飛ぶ。

ここのところ野営続きで疲れていたとはいえ、風呂上がりの全身びしょ濡れの格好でベッドへダイブするのはいかがなものだろうか。

リッドの肩にかけられたままのタオルは、もはや何の意味も成していない。

「おい、聞いているのか!?リッド、起きろよ!」

「…うるせぇなあ〜。寝かせろよ…」

「風邪ひいても知らないぞ」

「ん゛〜〜〜」

リッドから返ってくるのは生返事ばかり。
髪を乾かそうという気はさらさらないらしい。

「全く…しょうがない奴だな。タオルを貸せ」

「なんだよ。拭いてくれんのか?」

「お前に風邪ひかれると、ぼくたち全員に迷惑がかかるからな。いいから早く座れよ」

過保護だな、なんて思いながら、リッドはキールにもたれかかる形で身体を預けた。

「…重い」

文句をいいながらもリッドを退ける事はせず、髪を拭いてくれる。

不器用なキールなりの優しさだろう。

宿屋の薄いタオル越しに感じるキールの手が熱い。

「キール、好きだぜ」

「なっ…!!」

自分の後ろにあるキールの熱が、一層増すのをリッドは感じた。

後ろから抱き込む様に腕が回される。

「リッド……ぼくも…、……って、寝るか?フツーこの状況で…」

自分の言いたい事だけ言っておいて。

キールに身体を預けたまま、すやすやと寝息を立てているリッドの寝顔を見て、キールは溜め息を吐いた。

そんな安心しきった顔されたら、怒るに怒れない。


「…おやすみ、リッド」


起こさない様にリッドの身体を横たえさせ、キール自身もベッドの中へ潜り込んだ。




end.

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