NL部屋
□ワガママな願い
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その日、取った宿は2人部屋だった。
部屋割りで珍しく一人部屋を使える事になったルークは、久々の一人部屋を満喫していた。
ただ、それが少し物足りなくなってきた頃。
手持ち無沙汰でぶらぶらと廊下をうろついてみれば、会いたいと思っていた人物に遭遇した。
「あ!なぁ、ノエル。もし、良かったら…今から俺の部屋来ねぇ?」
「え?」
夜更けに男からこんな誘いがくれば、流石に動揺するだろう。
彼女もまたその内の一人だ。
「あ、いや…別に、変な意味じゃなくってさ!ただ、話がしたいかなって…」
駄目か?と尋ねられれば、ノエルは元々好意を抱いているルークの誘いを断る理由が思い付かない。
ニッコリと笑ってノエルが言う。
「…いいですよ。お話ししましょう」
* * *
「お邪魔しますね」
「あ、…うん。その辺テキトーに座ってくれよ。」
決して広くない部屋を見渡し、ノエルは空いていたベッドにちょこんと座った。
今までルークに部屋に来て欲しいなんて言われた事などない。
ノエルは内心ドキドキしながら、それを悟られまいと軽く溜め息を吐いた。
「大丈夫ですか?」
「え?」
心なしか心配そうな表情をしたノエルは、隣へ同じ様に腰掛けたルークの顔を覗き込んだ。
「いえ、今日のルークさん、なんだか少し元気なさそうに見えますから…」
突然の事に対応しきれずにルークは顔を赤らめる。
「そうか?別にいつもと変わんないと思うけど…」
そっけなく返事をしてみるものの、あながち外れてはいないノエルの観察力にルークは内心ドキドキしていた。
「そう、ですか?それならいいんですけど…。でも、余り無理なさらないで下さいね。」
「うん。…ありがとう。」
ノエルと一緒にいると、自然と柔らかい表情になるのをルークは感じた。
本人は気付いていないかもしれないが、一緒にいるととても心地が良い。
信念を宿した強い心と、優しい笑顔。
それに今までルークがどれだけ助けられてきただろうか。
「ノエル。……」
できるだけ優しく呼んで、その細い身体を思い切り抱き締める。
願いは思わぬ形で叶ってしまった。
これが当初の目的だった、とは言わない。
end.