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□あたたかな
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その時はすぐそこまで迫ってきている。

例え、これが全ての終わりではないとしても。







「眠れないのですか?」

窓辺に腰掛け空を見上げているルークに、後ろから声がかけられ肩が震えた。

今は真夜中。
まさか自分以外に誰かが起きているとは思わなくて、ルークは振り返りその人物に曖昧な笑顔を向けた。


「ジェイド、…うん」

返事をするとまた、その星空を眺め始める。


「明日も早いのですから、休んでおかないと身体が保ちませんよ」

「うん、分かってるよ。…けど、もう少し」

仕方ありませんね、と呟いてジェイドはルークの隣りに腰掛けた。


「陛下の事ですか?」

言われてルークは目を見開く。
まさに今、考えてた事だったから。


「うん。今、どうしてるかなって。もう、あんまり時間もないしさ」

そう寂しそうに呟いた青年を、ジェイドはただ穏やかな表情で見つめた。

会いたい、なんて言わないのだろう。
そうする事で自分が陛下の重荷になってしまう事を恐れて。

そして、あの皇帝もまた。

自己中心的に周りを振り回している様で、実は案外臆病な面がある。

それだけルークの事が大事だということだろうが。

それぞれがお互いに気を遣い合い想い合っている。
全くこの上なく人騒がせで、勘違いな連中だ。

(お互い大変な人に惹かれてしまったものですねぇ)

ふぅ、とジェイドは溜め息をついて眼鏡のフレームを片手で上げた。


「ルーク。陛下に謁見しに行きなさい」

今の貴方達を見ているのは、少しばかり心苦しい。
らしくないというのはジェイド自身感じていたが、敢えて進言する。

「え…。でも」

時間が。
そう呟いた青年にジェイドは少しだけ目元を緩めた。
哀れ、だと思ったのかもしれない。


「確かに時間は余りありませんが、そこまで急を要する訳でもない。なにより貴方が心残りになるでしょう」

まぁ、私が口出しするべきではないのかもしれませんがね。

本当に、人の恋路なんて自分には全く感心も持たなかった筈なのに。

ジェイドにとって切り捨てられない何かが、この2人にはあるのかもしれない。



「感謝して下さいよ」

「え?」

なんか言ったか?隣りでルークが首をかしげる。


「なんでもありませんよ。さぁ、もう休みなさい。陛下の所には明日にでも伺いましょう」


それくらいの時間なら十分作れますからね。
いつもの笑顔でジェイドがいう。


あの温かい場所へもう一度戻れるんだと思ったら、自然とルークの頬も緩んだ。


「うん、ありがとう…!ジェイド」




星達は瞬きを失わず、その微かな光を人々の元へと降り注ぐ。




end.

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