キルリレー小説★

▼書込み 

03/20(Wed) 10:28
C


 ほんの一瞬、傷付いた表情を覗かせたキールにリッドの胸がドクリと一つ大きく鳴った。
「…退け、って言ってんだよ」
 何か言いたげに開かれたキールの薄い唇からは音が発せられる事なく、そのまま下を向いてしまった。
 それっきり何の反応を見せてこない相手に少しばかりの苛立ちを覚えながら、リッドは先程口に出した言葉をもう一度唱える。早くこの現状から脱け出したくて自然と口調も強まる。
 どちらにせよ選択肢は二つしか残されていない。それはお互いに解っていた。どちらを選ぶにしてももう後戻りは出来ないのだ。
 もうただの幼馴染みではいられなくなってしまったのだと、こんな状況下でも妙に冷静でいられる事にリッド自身が一番驚いていた。
 それまで下を向いていたキールの頭がゆっくりと持ち上がった。
 余裕のない、だが、何かを決意したかのようなダークブルーと視線が絡む。リッドの胸がまた一つ大きく鳴った。
「……嫌だ」
 ギュッ、と。掌に熱を感じてその先に視線をやると、キールの手がリッドの手に重ねられていた。そのまま壁に縫い止めるように繋がれ、元々ゼロに等しかった距離がさらに縮まった。

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