キルリレー小説★
03/11(Mon) 14:39
B
咲子
(なんであんなこと云っちまったんだろう)
こうなってしまった原因でもある先程のやり取りをぼんやりと思い返して、「ほんと、何やってんだ俺…」と僅かに口角を引き吊らせる。本当は溜息のひとつくらい吐いてやろうとも思ったが、事の原因が自分の発言であると自覚しているため、流石にそれを実行に移すほど馬鹿ではない。
(それに…)
こちらの様子を窺いながら、頬に触れていた右手を所在なさげに彷徨かせているキールに視線を合わせる。居心地が悪そうに、キールがほんの少しだけ身じろいだ。
(…なんで、そんな泣きそうな顔してんだよ)
泣きたいのはこっちだ、馬鹿。何なんだよ、先刻まではあんなに勢いづいてたのに…と思い、馬鹿馬鹿しくなった。何を考えているんだ、俺は。そもそも、あの石頭で融通の利かない堅物のキールが何の考えもなしにこんな行動…いや、最早暴挙とでも云うべきか…に出るはずがない。だが、それは少なくとも俺が知る限りではの話だ。しかし、だからと云って俺のことをからかうような風でもない。その証拠に、先刻からキールの目は至って真剣なままこちらを見ている。俺の幼馴染みは、誰の目から見ても明らかに本気だった。
(止めてくれ)
耐えきれなくなって、俺はキールから視線を逸らした。あの瞳だけで自惚れそうになる自分が心底嫌になる。
「…しないなら、退けよ」
この世には一時の気の迷いという言葉もある。間違いなら間違いで片付けてやりたい。その一心で、俺は今まで閉ざしていた口を開いた。
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