clapとowarai2

□銀のスプーンで海をすくった clap
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恋は何度もした。ちいさな、すこしつついただけで崩れるような脆い恋も、このまま一生彼のとなりにいられるかもしれないなんて期待がふくれていくような恋も。でもそのすべては多少のずれやささいな行き違いで壊れていった。


一生続くものなんてないのだと、はじめて付き合った彼と別れたときに知った。あんなに浮き足立った気持ちが数ヶ月の時間でつめたい氷のようになってしまった。 その事実だけが身に浸みていった。



「ねえ、」
「・・・なに?」
「俺ら、付き合わない?」
「・・・え?」



翔の声を聞いたとき、終焉の音が聞こえたような気がした。本当はわたしが聞こえたつもりになっているだけだというのに。誰よりもわたしが終わることにおびえている。それでも今度こそは彼とずっと居られるのではないかなんて浅はかなことを考えてしまう。今回こそは、後悔しない。そう心の中で何度も繰り返す。



「え?じゃないよ、 もう」



呆れたように笑う翔の声。その後にかちりと煙草に火をつける音が聞こえた。それに紛れるくらいちいさな声で名前を呼ぶ。彼がこちらを向いた後に「付き合おっか」 そういうと翔は酷く満足した顔で煙草の煙を吐き出した。








08.10.12
タイトルは星が水没さま
お わ ら い のリメイクで申し訳ない。

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