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□向日葵の涙のあと
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あの話を聞いたのは、二日ほど前の事だった。二宮くんのときの報道よりもひっそりとこっそりと広がっていたけれどそれは自然に、呼吸するくらい自然に私の元にその噂はたどり着いた。それを信じる、信じない、そういう次元の問題じゃなくて、ただ悲しい。こんなにファンの子の近くへと行こうとする彼が、いまもどこかで苦しんでいるのかと思うと本当に悲しかった。

ぱらぱらと紙が捲られる音と雅紀の鼻歌が空気に溶ける。今も心のどこかで彼は泣いているのでしょうか。私が雅紀に思う気持ちは恋愛感情なんていうものじゃなくて、ただ大切だから、影で泣くようなことはやめて欲しかった。(たまに貴方が笑っているのを見ていると酷く切なくて、悲しくなるのは秘密)







「ねー雅紀」
「うん?」
「たまに心配になるんだけどさ」
「うん」
「無理とかほんとにやめてよ」
「っははは!無理なんてしないよ」







本当は知っていた。雅紀がどうやって答えるかも、結局そうやって笑うのも。どうしたらいいかなんて昔から悩んでいたけど、それでも出来る事なんてなくて。 お願いだから幸せでいてください、そう願ってしまう。どうせそんなことを言ったって「幸せだよ」という柔らかい言葉が返ってくるのも分かっているけれど。

「秘密にするとか我慢する、イコール優しさとは限らないよ」ぽつり、唇の間からするり抜け落ちて漏れた言葉は当然のように雅紀の耳に入った。やばいと考えてもそんなのもう後の祭りで、どんな言葉が返ってくるのかとびくびくしていたらいつもより小さくて低い声で「そうだね」それだけ聞こえた。私は本当の雅紀がほんの少しだけ見えた気がした。(でも、そんなのは幻想だ)








向日葵の涙のあと





にい 08.06.23
(補足:相葉くんに交際報道が流れたら、というお話)

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