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□結局はすきだということ
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和はわたしを馬鹿だ馬鹿だといってからかう。
それはわたしにとって楽しい時間でしかなくて
いやだとかかなしいとかそんなことは考えた事はなくて。
それでもよくよく考えたら好きな人にそういうことを言われたら
普通悲しむのではないかという結論に達した。



「二宮さん」

「なに」

「わたしって馬鹿ですかね」

「 そうやって聞くところが馬鹿だよ」



悲しくない。
そういえばいつも彼はシニカルに言葉を吐かないのだ。
だからわたしはこうやって生きていられるのか。
どうしてわたしにはシニカルを含んだ言葉が無いのだろう。
でも、和の本質なんてわたしがどうにかしたって
絶対に、絶対にわかることはありえない。
それでも彼のことをすこしでも理解できたらいいなあと
そんな無茶で儚い空想を頼りにわたしは声を出す。



「好きな人のことを知りたいんですけど神様教えてください。」

「は? というか今のなに?」

「いや、神頼み」



わたしがそういって首を傾げると和は珍しく自嘲めいた笑みを湛えてわたしを見た。
その表情をかっこいいなあと惚れ惚れする反面、
和がこんな表情をするなんて珍しいなあと思い凝視していると
彼の顔はわたしの顔ぎりぎりまで迫っていた。



「好きな人本人に聞きなよ」

「なにが?」

「好きな人のこと」

「え」

「今なら告白、聞いてあげる」



彼の自嘲めいた笑みの訳もわたしにシニカルな言葉を吐かないのも
今の一言で全てわたしの脳内は理解することができた。
じゃあ、いまわたしが和に伝えることはあなたが好きということのはず。
にやにやとわたしの目の前で顔を緩ませている彼は、
いつもよりも優しい顔をしていて、それだけで
わたしは嬉しくて嬉しくて生まれてきて良かったと思いました。




にい 08.03.03

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