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□世界が変わるほどの恋をしました。
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ついつい視界の端に彼を捉えてしまう癖を失くそうと決めて学校に行ったのに。
それでも、私はその癖をなくせないようだ。
それ以前に、いつまで経っても私の生活の中心は思いきり彼なのだ。















つまらない授業中、窓側の一番後ろという
素晴らしいくらい素晴らしい特等席をゲットした私は、
いつもとは違い真面目に授業を受けていた。
いつもなら廊下側の前から3番目に座っている
好きな人を見つめて毎日を過ごすのがお決まり。
だけど、私は気がついてしまった。
大野くんを好きでい続けるのはとても苦しいことに。

久々に恋をした。
その恋は、とても辛くて苦しかった。
大野くんに好きな人がいないのも知ってたし、
猛アタックしようと思えば出来る。
でも、人一倍臆病な私は見つめる事しかできなかった。
人一倍臆病なだけで、人一倍大野くんが好きなのに。
だから、辛くなってしまったのだ。
ただ好きで、でも諦めるきっかけも無くて。
手の届くところに大野くんはいるというのに、それでも
透明で、でも私には到底超えられないほど
分厚い壁が、私と大野くんの前にはあるから。
その壁は、ただの意気地なしで臆病な私が作ってしまった
偽者の壁だっていうのも分かっているけれど。

また見飽きた黒板から自然と目を背けた先には彼。
どうして私は彼から離れられないんだろう。
こんなに、泣きたくなるほど苦しいのに。
言葉で表すのは簡単かもしれない言葉が、
私の心の中で、とても大きい重りになっていた。

ふう、大野くんをまた見てしまった私に、
ちいさくため息を吐いてから顔を上げた。
まただ。
まるで磁石に引っ張られるかのように、
私は大野くんを見つめていた。




「え・・・?」




やっぱり癖で見つめた先。
廊下側の前から3番目には、大野くん。
なぜか大野くんは後ろを見ていた。
もっと言うと、窓側の一番後ろくらいの位置。
途端に、体温が上がって後ろを向いた。
後ろに何か大野くんが興味を示す物でもあるのかな。
ちらり、大野くんを見ると、私の錯覚じゃなかったら
確実に視線がぶつかった。

にこりと、大野くんが笑った顔を確認すると同時に、
もうこの気持ちには嘘がつけないことがわかった。








世界が変わるほどの恋をしました。









にい 08.01.11

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