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□甘い痛み
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すこしだけあたたかくなってきた今日この頃。
皆さんはいかがお過ごしですか?
わたしは、 わたしはいま、大変です。
そんな訳の分からないモノローグを言いたくなるほど
わたしは今危機的状況に陥っていた。

学校が終わり、やっと家に帰れる!
心が喜びを叫んだとき、いきなり腕に強い力。
振り向けば、うちの学校でいろんな意味で有名な松本。
無駄にかっこいいからモテるのに愛想が無くて悪い噂とかもちらほら聞こえる男。
そいつがいつのまにやらわたしの腕を掴んでいたのだ。
わたしは松本に興味なんて無いから間近で見たこともなかったけど
こうやって見ると(ちょっと顔が濃いけど)まあかっこいい。
なんとなくモテるのがわかると言えばわかる。
そんなことを考えても松本はわたしの手を離す気も
なにかわたしに伝えるでもなく突っ立っていた。


「なに?」


あまりにもめんどくさくなって疑問を投げると松本はにやりと至極面白そうに笑う。
その笑みはわたしにとってなにやら悪い予感を彷彿とさせるものでそれは確実に正解。
松本はわたしの腕を思い切り強く引っ張ってそしてこう言った。


「好きなんだけど」


その声を聞いた瞬間にわたしの頭が疑問符を撒き散らす。
好きと言うのは主に愛の告白に用いられる気がするんだけど
何でこの人はこんなに脅迫まがいな感じでそんなことを言うのだろう。
そもそも好きって!わたし、この人と話すの初めてなんですけど!


「いや、あの、 は?」


どうにかしてこの状況を打開しないといけない、
そう思って無理やり声を出しても文にすらならない。
そんな風にあたふたとしているわたしを見て
松本はまたもや凶悪犯のような笑みを浮かべた。
怖い!この人怖いって!心がそう叫んだと同時にわたしの口は塞がれた。
松本の唇で。
いや意味が分からない、
脳がこれ以上の情報を遮断しようとしていると声が聞こえた。


「絶対逃がさないから、」


離れた唇と目の前で笑う松本。
心のどこかはああこいつからは逃げられないんだろうなあと
呟いてから幸せそうな笑みを零すのだった。






甘い痛み
(もう逃れられない)


にい 08.03.18

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