2008 クリスマス小話
□汚れを染める 白き雪*3
1ページ/1ページ
回答は空白。
頭の中も真っ白
【汚れを染める 白き雪】
答えを待ってどれくらい経っただろうか。
望美の身体は少しずつ、温もりを取り戻してきたがヒノエの気は満たされぬまま。
静かに待てば言葉を紡ぐだろうと思ったことは間違いだったのか…
「神子姫様…?」
ひくり…
彼女の肩が震え、反応を示した。
「神子…姫、なんて……ない…で」
小さな声を聞き取るのは困難だった。
何かと伺うよう瞳を覗きこめば、音なき唇は告げていた。
―神子姫 なんて 呼ばないで
今 日 だ け は ―
正直、驚いた。
呼び名を拒絶されるとは思わなかった。
それに『今日だけは』と続く彼女の願い。
理由は見えないが、改めて彼女の名を呼んだ。
不特定多数へ向ける「姫君」ではなく「望美」と。
「ありがとう…ヒノエくん」
そう言う彼女の瞳からは、一筋の涙が零れていたが、望美は微笑んだ。
続…