「ふぃー疲れたぜ」
ロイは溜め息混じりに言いながら、軍議の間の扉を開ける。
「ロイ、おかえり」
「ロイ君!おかえりなさい」
ロイが中に入ると、王子とリオンが声をかけてきた。
「お、おう。ただいま…」
笑顔で二人に迎え入れてもらい、ロイは照れてぶっきらぼうに応える。
「ルクレティアにはもう報告してきたんでしょ?」
「ああ、今してきたとこだ」
ロイは王子と同じ格好していた。王子の影武者として作戦を終えた後だった。
ロイが王子の問いに答えると、王子は頷いて扉の方へと歩いて行く。
「王子、どこへ行かれるのですか?」
リオンが慌てて王子を追い掛けようと足を踏み出した。
ロイは引き止めたい気持もあったが、言ったところでリオンがここに残るわけもなく、虚しいだけなので堪える事にした。
「今日はもうすることないし、ぼくはお風呂に入ってゆっくり休むよ。だから一人で平気だよ」
「そうですか…」
王子の言葉にリオンは足を止めた。それを確認し王子は扉に手をかける。
「そうです。じゃあリオンは帰ってきたばかりのロイの労を労ってあげて?」
「はぁ?何だそれ?」
「はい。わかりました」
王子はにこりと微笑みを残し扉の外へと消えた。
リオンは頷きぺこりと頭を下げ、ロイは呆然とパタリと閉まった扉を見つめる。
「ということで、ロイ君。この間、私の暇に付き合っていただいたので今日は私がお付き合いしますよ!お疲れでなければ、ですけど」
リオンがにこりと笑って提案してきた。
王子の差し金であるところに少し引っ掛かりも感じるが、ロイはここは素直に王子に感謝することにした。
せっかくのリオンからの誘いなのだ。疲れていたとしても受けないはずがない。
「疲れてねぇ!というか、ちょ、ちょっと待っててくれねぇか?着替えてくるから!」
「あ、でしたら食堂で待ち合わせはどうですか?お腹すきま…」
「わかった!」
リオンがいい終わる前にロイは軍議の間を飛び出していた。後ろから慌てないでくださいね、とリオンの声が聞こえる。
めったにないリオンと過ごせる時間を無駄にはしたくなかった。
早く部屋に戻ろうと必死に走るが、今日ばかりは離れた場所にある自分の部屋を呪った。
「よし着いたっ!」
ロイはバンッと勢いよくドアを開けて部屋に入り、さっそく着替を始める。
「ロ、ロイ?帰ってきてたんだ」
「そんなに慌ててどうしたんだ?」
部屋にいたフェイロンとフェイレンがロイの勢いに目を白黒させて驚く。
「ああ、いやまぁな」
着替に集中していたロイは、二人の話を話半分に聞き、適当に答える。
「ちょっとロイ、聞いてんのっ!?」
「あーわりぃ!俺ちょっと行ってくるから!」
「行くって、どこへ?」
ロイの態度にムっとしたフェイレンの問いに答えず、つけていた銀髪をポイッとフェイレンに投げ渡し、ロイはじゃあな!と言って部屋を駆け出して言った。
「あれは…王子さんの護衛がらみだな…」
ロイが脱ぎ捨てて言った服を拾いながら、フェイロンは、ロイの急ぎっぷりの理由を承知したと言わんばかりに呟く。
それを聞いたフェイレンは無言で渡された銀髪のかつらを投げ捨てた。
続く
ごえいのきゅうじつの後日の話です。今度はロイの休日…というか、どちらかというと仕事後ですね。
今回短いですが、まだ続きます。