「納得いかねぇなぁ」
「オレだって納得いかないよ」

不満げに腕を組むロイと、同じく不満げに顔をしかめるニックを見てリヒャルとは溜め息混じりに呟いた。

「それを言ったらボクだって納得できないさ…」



さくせんかいぎ


リヒャルトはロイ、ニックと、城の外の塔の影が落ちる場所で向かい合って唸り声上げていた。
この場所に来てかれこれ半日が過ぎようとしていた。

「ねぇ、もう今まで通りでいいじゃない」

リヒャルトは二人を見て言った。言葉の後に早くミューラーさんの所に行きたいんだけど。と呟くのは忘れない。

「はあ?それ言ったら『第一回協力攻撃におけるオレ達の作戦会議』の意味がねぇだろうが」
「そうだよ!」

目を細めて言うロイと、それに頷くニックを見てリヒャルトはもう一度、深く溜め息をついた。
朝、ロイに呼び出され、何かと思って行くとロイだけでなくニックもいた。ロイ曰く、

「オレらの協力攻撃は地味だ!」

らしい。ニックも不満があるらしく、ロイの言葉に何度も頷いている。

「もうさ、最後に皆でミューラーさぁん!って手を振るのでいいじゃん!ね、決まりっ!」

リヒャルトはとても良い提案だと自画自賛し手を叩く。


「「絶対嫌だっっ!!!」」


空気が割れんばかりの大声で二人が言う。リヒャルトは慌てて耳を塞いだ。

「うるさいなぁ。そんな思いっきり否定しなくてもいいでしょ」
「普通否定するだろ!ってか、お前の立ち位置がセンターなのが納得いかねぇ!」

ロイにビシッと指を指をつきつけられリヒャルトは目を瞬かせた。

「だってボクが一番強いからしょうがないよ」
「ぐ…」

リヒャルトが肩をすくめ言うと、ロイが言葉を詰まらせ黙った。リヒャルトがね?とにっこり笑うと、ニックがここぞとばかりに手を挙げる。

「じゃあオレ、アックスと一緒に攻撃する!」


「「却下」」


今度はリヒャルトとロイが声を揃えて否定した。しかし、リヒャルトは待てよと呟いて考え込んだ。
アックス…竜馬…乗れる…ミューラーさん喜ぶ!?

「三人でアックスに乗って攻撃するとかは?」
「お、それいいな!」

ロイが同意し頷く。それを受けてニックは慌ててぶんぶんと手を左右に振った。

「無理だよ。三人も乗れない!というか乗せない!」
「ち、使えねぇ」
「なんだと!?」

「はいはい、喧嘩しなーい。全く。これだから子供は…」

掴み合いを始めそうな勢いのロイとニックに割って入る。
子供はと言われ、目の前の二人はギッと睨んで来た。

「たいして歳変わんねぇだろうが!このミューラー狂が!」

ロイが吐き捨てる様に言う。リヒャルトは静かにロイに近寄った。

「…言ったね?」
「な、なんだよ…」
「言ってはならない言葉を言ってしまったね」

リヒャルトは笑顔を崩さないままロイを見た。

「あ、あの…」

ただならぬ雰囲気を察したのか、ニックが恐る恐る口を挟もうと試みたが、リヒャルトはチラリと視線を送りニックの動きを止める。

「ニック…助けろ…」
「ごめ…」


助けを求めるロイにニックは力なく首を振る。完全にリヒャルトの迫力に負けている。

「さぁて、ロイは痛いのと痛くないのとどっちが良いのかなぁ?」
「どっちも…嫌だ…」
「そうか、痛くない方だね。任せて、一瞬で…さよならだからさ」

ヒッと息を飲むロイを見てリヒャルトは含み笑いをもらした。そして、腰に差してある剣の柄に手をかけたその時…

「こらぁ!リヒャルトぉお!んなとこで、何サボってやがんだバカ野郎!!」

後ろから、この世で一番尊敬するあの人の罵声が聞こえ、リヒャルトはギギギと後ろを振り返った。

「ミュ…ミューラーさん!ミューラーさぁあぁん」

罵声の主は、そう、リヒャルトの崇拝するミューラーさん、その人であった。
リヒャルトは目の前のロイを思わず突き飛ばし、ピョンピョン跳ねながら千切れんばかりに手を振る。

「遊んでる暇があったら剣の素振りでもやれ!!」
「わっかりましたぁ!!」

フンと鼻を鳴らして去っていくミューラーの姿が見えなくなるまでリヒャルトは手を振っていた。
満足すると、思い出したようにロイとニックを振り返る。

「…ということで、ボクは行かなくちゃなんだけど?」

唖然として見てくる二人にリヒャルトは言った。突き飛ばされたロイがハッとして、立ち上がった。

「行かなくちゃって、まだ話は終わってねぇ!」
「そうだよっ!」

勢いづく二人をしり目に、リヒャルトは歩き出す。

「ごめんね、ミューラーさんは絶対だから!『第二回協力攻撃におけるオレ達の作戦会議』に持ち越しだね!」
「お、おい、リヒャルト!」

呆然と立ちすくむ二人にリヒャルトは後ろ手に手を振った。

「次までに案件を考えておこうね〜」
「リヒャルト!!…行っちまった」



取り残された二人は顔を見合わせた後、がっくりと肩を落とした。

「オレ達も戻るか」
「そうだね…」





END






リヒャルト、アンケート2位記念で書きました。

美少年攻撃の作戦会議です。ニックの影が薄いような…。
リヒャとミュラさんは切り放せなかったです(笑)


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