「ミアキス様とロイ君が、なんて知りませんでした!」

歩くスピードは変えず、後ろを追い掛けているロイに聞こえるような大声でリオンが言った。



ふいうちのゆくえ3


「そうじゃないって、リオン!誤解だって!」

ロイは慌ててリオンに向かって言う。自分で言っておいてやけに言い訳くさい事に気づき、頭をガシガシ掻きむしる。
リオンはそんなロイを横目で見て、立ち止まり勢いよく振り返った。

「誤解!?…たとえそうだとしても、私に弁解する必要などありません、どうぞ戻ってくださいッ!」
「ちょ、待てって。怒るなよ、リオン」
「っ!!!どうして私が怒らないといけないんです?」

確にその通りだった。ロイには弁解したい理由があったが、リオンには怒る理由はない。
そう思うが、目の前のリオンはどう見ても怒っているように見えた。

ロイは立ち止まったリオンを見て、顔をしかめ首を傾げる。

「確に…そうだよなぁ」
「は?」

妙に納得して頷くと、リオンが眉を潜めて聞き返してきた。

「いや、確にリオンが怒る理由はねぇのに、何でそんな怒ってるんだ?」
「なっななな…」

ロイが不思議そうに見ると、リオンは肩をわななかせ、みるみる頬を紅く染めていった。

「知りません!というより、怒っていないと言っているでしょう!?」
「いやそれが…って、これじゃあらちがあかねぇな」

さっきらか同じことを繰り返していることに気づき、ロイは溜め息混じりに肩をすくめた。

「とにかく、違うから」

言って自分でも何だかわけが分からなくなり、力なく笑った。

「私に弁解する必要ないと言ったはずで…あっ」

その時、リオンの瞳から、ポロリと涙が一滴溢れ落ちた。
ロイは驚いて直ぐには反応できず、ただリオンを見つめた。リオンも、自分自身に驚いているらしく、目を瞬かせていたが、ハッとして急いで下を向いた。

「リ、リオン?どうしたんだ?大丈夫か!?」
「平気ですっ。…すみません」

ロイが心配し覗き込むと、リオンは慌てて涙を拭った。

「平気じゃないだろ?泣いてんのに」
「……」

覗き込んだまま眉を寄せて言った。リオンはうつ向いたままで黙っているだけだった。


「変なもんでも食って、腹が痛くなったとか?」
「なっ、そんな人を食意地張ってるみたいな言い方しないで下さいっ!」

キッと睨みつけて言うリオンを見てロイはニッと笑った。

「おっし、いつものリオンだな!」
「ロイ君…」
「さって…どうすっかな。ここで立ち話しててもしょうがねぇし…」

言いたくない事を無理に聞き出したって仕方ない。そう思いつつ、リオンから離れ、頭の後ろで手を組み歩き出そうとした。

「…自分でもわからなくて」「ん?」

ロイは躊躇いがちに言うリオンを見る。リオンは困ったように視線をさ迷わせていた。

「分からないですけど、ロイ君の言葉を聞いたら、なぜか涙が…」
「お、オレのせいかっ!?」

ロイは慌てて自分を指差した。

「あ、いえ違います!何だかホッとして…ホッと?何ででしょう?」

リオンも慌てて首を振ったが、そのままブツブツと呟き一人考え込みだした。

「?よく分かんねぇけど、オレのせいじゃないみたいだな」

とりあえず安心したところで、ロイのお腹がぐぅと鳴る。

「なぁ、腹減ってねぇ?」

照れ隠しに頬をポリポリと掻きながら、ロイは言った。
それを聞いたリオンが、そうだった!と両手を合わせる。

「ロイ君がミアキス様に呼びつけられたと聞いて、王子がお二人を誘って、お昼を一緒に食べようと言っていたんです」
「へえ?じゃあ、二人んとこ戻るか」
「そうですね」

ロイとリオンは元来た道を歩きだした。
ロイはふと誤解はとけたのだろうか?とチラリと隣のリオンに目を向けたが、リオンが嬉しそうに微笑んでいたので、まあ良しとした。



END



大変長らくお待たせしましたーっ!(深礼)
私の中で、ロイも自分の事にかんしては鈍そうだということで、こういう結果に…(笑)
リオンも自分の気持に戸惑う感じで。
この二人を書いていると、うちの王子さんってば…(何)と思ったりしていまいます(笑)



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