Prince in the Box 2

□『モテる男になるために』
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「モテたい……彼女欲しいよぅ……」

葵が部室でぼやいていた。

「バネさん、どうしたらいい?」

(ツッコミの)男らしさと(名前の)爽やかさには定評のある黒羽に聞く。

「俺に聞くな……そういうのはモテる奴に聞け」

「バネさん、モテるじゃん!」

「そんなことねーよ」

その余裕のある態度が憎い、と葵は思った。

「サエに聞けよ。なんてったって『ロミオ様』だからな」

「……モテるのはモデル並……って、バネさん、ちょ、タンマ」

「うるせぇ!」

いつものバイオレンスなどつき漫才に、葵はため息をつく。

「モデル並のイケメンに生まれたかった……」

「……ま、努力すればいいだろ」

「男は顔じゃない」

「バネさん……!ダビデ……!うん、僕頑張る!」

二人に慰められて少し立ち直った葵。
さっそく、佐伯に聞いてみることにした。

「どうしたらモテる?」

「うーん……気配りとか、優しさ?」

「えー!?そんなんじゃなくて、イケメンオーラとか爽やかさ希望!」

「それはよくわからない」

「サエさんみたいな男になりたい」

直球な葵の言葉に、佐伯は苦笑する。

「そうだなぁ……女子は汗くさい男は嫌いだよね?俺はそこは気をつけてるよ」

「運動部にそんなこと無理じゃ……」

「スプレーとかシャンプーとか、そのへんに気を使うだけで違うんじゃないかな」

「そういうもんかなぁ……じゃあ、今日はサエさん観察して勉強する」

「なら、家に泊まる?」

「泊まる泊まるー!」

突然のお泊り会決定。
はしゃぐ葵に、「大変だと思うのね……」と樹が呟き黒羽が神妙な顔で頷くのを天根は不思議そうな顔で見ていた。
葵はそれに気付かなかった。

部活が終わり、葵は一度自宅に戻ってから佐伯の家に向かった。
モテる男になるべく食事中も佐伯を見つめ、「見られてると食べにくい」と叱られたりしつつ。

「一緒にお風呂に入っちゃおうか」

……という事になった。

「今日の気分はモッツかな」

「気分!?気分で決めるの!?」

「うん。今日はモォッツ・ヘェィアー(※CM的発音)」

「……後は、どんな?」

「サク!セス!(※CM的発音)もあるよ」

「使い分けるのかぁ……」

佐伯の素敵なCM的発音はスルーすることにしたようだ。

「剣太郎はどうする?」

「ぇ?じゃあ、モォッツ・ヘェィアー(※CM的発音)で」

……華麗にスルーはできなかったようだ。

「洗ってあげるよ」

「わぁ!」

危機感の薄いヒロインの夢小説のような展開に思えてきたのは気のせいだ。

「ちっちゃい頃を思い出すなぁ。ありがと」

髪を洗ってもらい、葵はご機嫌だ。
お礼に佐伯の髪を洗ってあげようとしたら、葵の髪を洗いながら自分の髪も洗っていた。
器用に、スマートに!
葵はまた1つ佐伯がモテる理由を見つけた。

「じゃあ、もう上が……って、何でまたシャンプー?」

「大事な所がまだ残ってるよ」

「洗い残し?え?でも、今度はツバキ?」

「大事な所はやっぱり女子ウケを狙わなくちゃ」

「……?」

「よ♪お♪こ♪そ♪股間へ〜♪」

「!?……ちょ、うわぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ……」

葵は佐伯に大事な所(の毛)を丁寧に洗われた。
芸術的な砂の城を作れる特技を持つ彼のテクは、こんな時にも発揮されるんだなぁ……と、気の遠くなりそうな頭でぼんやりと思った。
そして、これからは佐伯の事を目標にしてモテる努力をするのは止めようと、強く誓った。

【完】

ダビ「さっきのいっちゃんの、何?」
バネ「……サエは毛を洗うのが好きなんだよ」
ダビ「?」
バネ「……下の」
ダビ「剣太郎……危険だろう……ブッ」
バネ「てめー……!」
ダビ「ちょ、タンマ!」


→あとがき
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