世界の帆船

□〜大航海時代の航海術〜
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 航海術といっても、沿岸航海と大洋航海とは分けて考える必要がある。
 沿岸航海は常に陸地を視界内におきながら、山、巨大な樹木、岬などの自然の地形を目印にして進む。もちろんそれも容易くはなく、それなりの航海術は必要だった。

 そして、目印のない大洋を航海したときの航海術は。
@全く未知の海域への航海術
A一旦確認された陸地に再び辿り着くための航海術
 これが必要になる。
 @の未知の海域への航海に限定していえば、海図も何もない海域を行くのだから、船を一定の方向に進ませる技術さえあれば良かった。陸地に辿り着くかどうかは全くの偶然まかせである。
 Aになると偶然まかせでは、百l不可能だ。陸地の位置の特定はもちろんのこと、航行中の自身の位置を特定し続ける必要がある。
 位置の特定は現在では、緯度・経度で表されている。
 大航海中にも緯度・経度・方向という考え方はついてまわった。
 例えば航海中に島を発見したとする。情報としては次の点が特定される。
▼出発点
▼方向
▼緯度
▼航海日数と距離(経度)
 もし「□□港から西に速度▲▲ノットで50日間航海して、●●`bの位置で島を発見、経度は北緯20度」という情報があったならばとりあえず北緯20度の位置まで行き、そこから西に向けて50日間航海で同じ距離を進めば理論的には同じ島に辿り着くことができる。




〜航海に必要な器具〜

 そのためには自身の位置を知り、目的地に辿り着くためのルートを正確に保つことが必要になる。
 まず出発点はいいとする。方向の確認については羅針盤が使われた。
 羅針盤は中国で発明され、イスラム勢力を通じてヨーロッパに伝わった航海器具であり、針が常に北を指すことで方向を知ることができる。
 しかし羅針盤はまだ未熟な方位観測器具であり、大洋中では地磁気の偏差によってズレを起こす。その後羅針盤も改良されて機能も正確になったが、熟練した船乗りたちの間では「羅針盤に頼らなきゃ方向の分からないヤツは未熟だ」という強い思い込みがあったらしく、天体の観測(北極星や太陽)や雲などにより方向を割り出すことに熱心だったという。
 緯度を測定する器具は、多種多様である。
▼アストロラビオ(アストロラーベ)
▼コードラント
▼クロススタッフ(ヤコブの杖
▼バック・スタッフ
 などがある。いずれも天体観測に用いる道具である。この道具で正午の水平線上の太陽高度や夜間の北極星の高度によって緯度を算出し、自分の船が予定位置より北か南かを割り出していた。
 ただ、船の揺れが激しいときは正確な測定など出来るはずもなく、ことに夜間の北極星観測では誤差が生じるのは当たり前のことだった。
 方位と緯度の計測は、これらの道具や演算を駆使してなんとかこなすことができる。
 だが、問題は経度の測定だった。経度の測定に関しては、出発した港からの移動距離や日数によって推定された。
 日数は航海日誌などにより正確に把握できるとして、それよりも問題は移動距離の算出である。
 移動距離の算出には、船がどのくらいの速さで進んでいるかを知ることが大切だが、計器などない大航海時代、使われたのは木片だった。
 船首付近から木片を海に投げ入れ、船尾を流れ去るまでの時間を計って速度を測定した。
 時間の測定には砂時計が使われることが多かったが、測定者が歩くスピードを参考にしたり、一定の決まり文句を唱えて測定することも多かった。また、頻繁な計測も必要だった。
 コロンブスなどは30分おきに船首と船尾に乗組員を配置し、砂時計による測定をしていた。ただ、船乗りたちの努力は認めるにしても、測定の正確さには、おおいに疑問が残る。
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