日記SS

□冬夏
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リビングにあるソファーに真っ直ぐ向かうと、うつぶせに倒れた。
最近の季節事情はおかしいと思う。日本は春夏秋冬の区切りがあるのに、春と秋がとても短い。
急激な温度変化が続き、体は気候に追いつけず怠くてしょうがない。
「うう……ご飯作るのめんどくさい……」
こんな事ならコンビニで何か買えばよかった。
作り置きは冷蔵庫に眠っているが、今は皿に移し替えるのすら億劫に感じる。
「ただいま。……どうした」
「おかえりぃ……しんどくてだらけてるとこ……」
「珍しいな」
スーツを椅子に掛け、冬大は跪くと髪をそっと撫でてくれた。
あやすような触れ方に、その手に甘えたくて頬を摺り寄せる。
「ヤるのは?」
「女子の日だから無理でーす」
「いつ女になったんだよ」
冗談が面白かったらしく、喉を鳴らして笑われた。
本当はしたいが、今日は本当に怠くて無理だ。
「中二の夏から冬大の“女”だろ?」
「確かにそうだな。飯は食えそうか?」
「作ってくれるの?」
冬大のご飯は嫌いじゃないが、味付けが……。
表情に出たようで、冬大は苦笑いを浮かべるとキッチンに向かった。
「俺の飯は苦手なんだろ? 作り置きを温める」
「ありがと。じゃあ肉豆腐と白和えとトマトと茄子のチーズ和えが食べたい」
「……怠いくせに食うんだな」
それだけ食える元気があればヤれるだろ? と、表情が物語っているが気づかないふりをする。
「はやくたべたーい」
傍若無人に言えば、いつも夏維を好き勝手する暴君は素直に言う事を聞いてくれた。
不調をわかってくれたようで、優しさについ口元が緩む。
──体調が落ち着けば、たくさん乱れよう。
できなくて残念なのは夏維も一緒だ。早く体調を戻すために、しっかりご飯を食べて、体を休めないと。
空腹をくすぐる香ばしい匂いが届き、夏維は重い体を動かした。

おしまい。

夏維に「女子日」って言わせたかっただけですw
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