日記SS

□春日野家
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柚子が大好きな春日野家の話


春日野家の朝は一般家庭に比べるとゆったりしている。
妻・柚子が朝早くから家事をするため早起きなのだ。妻との時間を長くとりたい夫・侑一や、母が大好きな息子、娘、末っ子も自然と早起きになった。
「ママ、おはよー!」
「結(ゆう)おはよう」
末っ子の結は大好きな柚子に飛びつく。
まだ幼稚園生にも関わらず、一人で起きる事ができる。
えらいわねと頭を撫でられ、結は満足そうに笑った。
「お母さん、おはよ!」
「かすみもおはよう」
小学年のかすみは、髪を結ってもらう為に今日も髪ゴムとクシを持って「ポニーテールがいいな」と母の腕に抱き着く。
黒く艶やかな長い髪は母とお揃いで、かすみは自分の髪が大好きだ。
「お母さん、おはよう」
「冬河(とうが)もおはよう」
冬河は学ランのボタンをきっちり閉め、柚子が作った朝食を運ぶ手伝いをする。
その間に柚子はかすみの髪を結い、冬河に「いつもありがとう」と労いの言葉をかけた。
母の言葉が嬉しいようで、冬河ははにかむ。
「おはよ、柚子」
「おはよう、侑一くん」
結婚して子どもが生まれても、二人はずっと名前で呼んでいる。
いつものように頬にキスをする両親を見て、冬河は「俺のお母さんなのに……」と恨めしい目を侑一に向け、かすみは「あたしのお母さんなのに!」と頬を膨らませ、結は侑一の足を蹴った。
「結、親の足蹴るなよ」
「パパがママにちゅーするもん! ぼくもママにちゅーする!」
そう言って小さな手足をバタつかせ、結はしゃがみこんでくれた柚子の頬にキスをする。
「あ! ずるい! あたしもする!!」
ポニーテールを揺らし、かすみも柚子の頬にキスをした。
思春期真っ盛りの冬河は躊躇いもなく柚子の頬にキスをし「お母さんは今日も美人だよね」と口説く。
「お前らなぁ……柚子は俺の奥さんなんだけど?」
「「「だって大好きなんだもん」」」
三重奏は息がぴったり。
冬河は侑一と柚子が上手く混じった顔立ちで、かすみは侑一似、結は柚子にそっくり。
けれど全員の気質は侑一のを受け継いだ。ある意味ライバルが増えたようだと侑一は苦笑いを零す。
愛する夫と子ども達のやりとりに、柚子はニコニコと笑顔を浮かべる。
「さぁ、朝ごはんを食べましょうか」
大好きな人の言葉に、親子は一時停戦し、柚子を中心に食卓に着く。
食事が終われば出勤、登校、登園前まで柚子とゆっくり過ごせる。味わいつつ尚且つ早く食事を終わらせようと、柚子以外の四人はいそいそと食べ、柚子はゆっくり味わいながら食べた。

おしまい。
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