日記SS

□望順
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ホットミルク

賞味期限の近くなった牛乳を見つけ、順敬はカップに全てを注いだ。
約二分半温め、砂糖を混ぜ込む。ほのかに甘い香りが漂い、誘われるように口づけた。
「あまい」
少し入れすぎてしまったかもしれない。でも、こんな寒い夜にはちょうどいい温かさと味わいになったと思う。
一口、また一口。優しい味が体を温めていく。
ゆっくりと。じっくりと。時間をかけて飲んでいけば、溶け残った砂糖がざらりと舌に触れた。
「ごちそうさまでした」
これで少しは眠れるようになるだろうか。
望のいない夜を何度も過ごしているが、今夜は何故か眠りにくい。
季節の変わり目のせいか。それとも冷え込んでいるせいか。
いや、これはただの理由付けだ。
ここ最近望とゆっくり過ごせていないせいだと思う。
もっと望の姿を見たい、声を聞きたい、触りたい。それが満足にできていないせいで、不眠になった気がする。
仕事に支障がない程度に睡眠はとっているし、あまりにも眠れなければ市販の睡眠導入剤を使う様にしている。
望がいないといつもの生活ができないくらい、順敬はダメになってしまった。
それほど大事な人になっているから。
「……あそこって近くにコンビニあったかな」
またホットミルクを飲みたくなり、コートを羽織ると財布を握りしめ、家を飛び出した。
冷たい夜風が顔を刺す。寒さにますます目が覚めてしまう。
けれど足を止める事なく、交番の近くにあるコンビニに向かった。
窓からみえた望の横顔。今は一人きりのようで、順敬は交番の扉を開けると「近くにコンビニってありますか?」と、とぼけるように訊ねた。

おしまい
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