日記SS

□恭矢
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※書きたくなったので書いてみた。
※リクで頂いているのとは別の話にしますので、ご安心ください。
※あと駆け足で書いちゃったので後半は酷いですwごめんなさいw



日本は海に囲まれた小さな島国。
それ故に、他の大陸国家と同等の力を付けるべく、精神や身体的資質等が優っているアルファを強く望む傾向があった。
ベータはまだしも、努力などで補ったところで生殖動物として烙印を押されたオメガは虐げられる存在だ。
アルファの男女でアルファの血を増やすべきだという考えが一般的とされ、アルファとオメガはアルファの血を確実に増やすことができるかと言われれば難しいところだ。
だが、運命の番は違う。
都市伝説とも言われているそれは、確実にアルファを、いや、アルファよりも優るアルファを授かることができると言われている。
「…まったく馬鹿らしいな」
そう言って矢坂は歴史書を閉じると、広い図書室を見渡した。
誰もいないのは、もう閉館時間に近いからだろう。鍵を手元に用意し、身支度を整える。
この学園に在籍して三年目。最高学年とわかっていても、本の匂いに囲まれたくてつい受験勉強をそっちのけで委員の仕事を優先してしまう。
閉める作業は一分も掛からず、図書室を閉めようとすれば「矢坂」と、心地よい声が届いた。
「先生?」
「良かった、間に合ったか」
小走りで駆け寄ってきたのは、昔塾で講師をしていた安曇恭成だ。なんの縁なのか、同室者である夏維やクラスメイトの深吾の友人でもあり、何かと気にかけてくれる。
「この間、御崎さんの本読んでるって言ってただろ?新刊持ってきたぞ」
「いいんですか?読み終わったらすぐに返しますね」
「いいって。もらっとけ。しかもサイン付きだ」
秋桜学園はアルファやオメガなどの種に関係なく、進学校の誇りもあってか成績が良ければどの種も迎え入れている。教師陣も例外ではない。
ただ、対策としてはアルファとオメガが寮で同室にならないようにしたり、オメガの生徒や教師にはピルの絶対服用、抑制剤と首輪の常備は必須となっている。
幸いにも番の契約に至る事故は起こっていない。
アルファの恭成と、ベータの矢坂。絶対に間違いが起きない種であり、性別。
だからこそこうして話していられる。そう、思っていた。
「ん…?」
「どうされましたか?」
手に感じる重みに、早く紙をめくりたいところだが、恭成は鼻を鳴らし、矢坂の匂いを嗅いでいる。
「いや…矢坂って香水かなにかつけてるのか?」
「まさか。そんなバカなことはしませんよ」
「んー?でもいい匂いがするんだよなぁ…。なんの匂いだ…」
好みの匂いらしく首筋を嗅がれると、肌が粟立ってしまう。くすぐったいような、それよりも恥ずかしさが上回る。
「嘘だろっ…!?」
「先生?」
飛び退くように離れた恭成。矢坂が首をかしげた瞬間、世界はぐるりと回った。
大好きな図書室の匂い。ピシャリと扉が閉められ、鍵がかけられる音。尻餅をついたせいか、尻が痛くて、つい涙目で凶行した男を睨みつける。
短く、荒々しい呼吸。不穏に光る瞳。溢れ出る汗に、ドキリとさせられた。
そして、悪夢の時間は幕を開けた。
一言で全てを語るなら、恭成の『番』にさせられた。
ベータであるはずの矢坂が、だ。
種は種だ。ひっくり返っても種転換なんてありえない。
けれど、ある不運の重なりが起きていたとしたらどうだろう。
出生直後診断の医師が経験の浅い新人だった事、オメガ特有の小柄な体格ではなかった事、今まで発情期の兆候がなく、目の前のアルファにフェロモンを当てられて開花した事…。
それら全てが『運命』と受け入れれる程、矢坂も恭成も強くなかった。
恭成が恋心を引きずっていたのを感じ取っていた。矢坂の今までの種を否定された。
なのに、きっかけはどうであれ、二人は『恋』をした。
罪悪感で潰されそうな恭成を、矢坂は支えたいと思った。
手篭めにしたというのに、未来を奪ったというのに、手を差し伸べてくれた矢坂を、恭成は一生をかけて守っていきたいと、恋心を抱くようになった。
酷い形だが『運命』は、『運命』だ。
愛されて産声をあげた子どもは、二人が『運命の番』だというのを象徴し、そして家族は末永く幸せな生涯を過ごした。
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