日記SS

□冬夏
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※時間軸。冬夏が秋桜に在学中
※冬大αが夏維Ω。


毎朝、首輪をつける。
自己防衛…に、しては随分甘いセキュリティだが、絶対にしなければならない。
それが番を持たない夏維にできる、唯一貞操を守れる方法だからだ。
この世界にはアルファ、ベータ、オメガと呼ばれる性が存在し、夏維はオメガと言う男女関わらず妊娠ができる特異な性別。
その存在は希少価値が高いものの、数ヶ月に一度やってくる発情期によって一週間ほど繁殖行為に没頭する体になってしまう為、責任ある仕事や通常生活を送れなくなってしまう。
性的なものや、生活がままならなくなるという理由でオメガは忌み嫌われ白い目で見られ馬鹿にされてしまう。
オメガを恨んだことはいくらでもあった。だが、今こうして教室の扉を開けると素敵な友がいたり、二つ年上の恋人との子どもが妊娠できるのに感謝している。
けれどまだ発情期だけはやってこない。
発情期を迎えたオメガは、恋人の性であるアルファの子どもを妊娠する事ができ、うなじを噛まれれば一生そのアルファとしかセックスができなくなってしまう。
番(つがい)と呼ばれる、相手から一生離れられない呪縛。
早くその呪いがほしい。なのに、もうやってきてもおかしくはない発情期の兆しは見えない。
魂の番と呼ばれるアルファとオメガだけに存在する運命の相手。そんな都市伝説なんて信じてないからこそ、早く発情期が来て欲しい。
恋人を、ほかの誰のものにもさせたくない。
「おはよー。高城、今日相手して」
教室にいたクラスメイトたちはその言葉にザワつき、深吾は盛大なため息をこぼす。
「佐藤…お前その発言気をつけろよ…」
「え?なにが?」
「……いや、いいよもう…」
ヒソヒソと繁殖行為を匂わす発言を責める声が広がるが、夏維の耳には届いておらず、深吾はわざと声を大きくして言う。
「訓練、ガチか?それとも手加減しまくってやろうか?」
「そりゃもうガチで!ボッコボコにしてやるからな!」
「オレに一度も勝てた事ないだろ。返り討ちにしてやるよ」
物騒な単語に誤解が解けたらしく、あたりの会話は穏やかなものへと落ち着き、深吾は腰を下ろした。
このクラスはアルファとオメガが一人ずついる。深吾はアルファ性を持って生まれたのもあり、夏維の発言で「二人は番なのでは?」と疑われてしまう。
元々知り合いで親しいのも相まってか噂は一人でに歩き始め、今じゃ深吾にとって大迷惑。
あの人に殺されるんじゃないかと、ドキドキしてしまう。
放課後の段取りも決まり、夏維は嬉々として座席につこうとすれば、チリリとうなじに何かが走った。
咄嗟に手で覆う。熱さなのか、痺れなのか言いようのない感覚は徐々に間隔が短くなっていき、そして…
ぶわりと、体中からナニかが溢れ出た。
「――っ!?」
あつ、い。喉が、灼ける。
呼吸のタイミングは浅く短くなり、頭が酸素不足でクラクラする。汗は滝のように吹き出て、熱くて、熱くて…
体が言うことを聞いてくれない。腰が勝手に昂ぶってきて、頭の中で「ほしい」の単語しか思い浮かばない。
ほしい。アルファが、精液が、子どもを作らないと…。
本能が、理性を壊していく。
「アッ…あ…!」
火照る体はトロトロと愛液を滴らせ、誰でもいいとにかく抱かれたいという欲求が激しくなっていく。
甘い匂いは教室を飛び出し、学園中にあっと言う間に広がった。
ある者は鼻や口を覆い、ある者は咄嗟にある人物へと振り返り、ある者は剣呑な瞳を開きそっと呟く。
「…やっと、来たか」と。
栓が壊れたかのように匂いは溢れ続け、ベータである一般人も夏維のフェロモンに腰が熱くなるが、アルファである深吾の瞳はケダモノのような鋭い光を放っていた。
夏維を床へと引きずり下ろし、制服を乱暴に左右へと引き裂く。
目の前で行われようとしているレイプを、誰も止めようとはしなかった。
アルファが終われば次は自分たちに順番が回ってくるだろう。オメガを犯したい。孕ませたい。
オメガのフェロモンは正常な判断すらもぶち壊し、ただただ夏維が深吾に蹂躙される様を熱い視線で見守っている。
「やっ…高城…!あっあっ…!」
「佐藤っ…!」
首輪の助けがあり、うなじは深吾の牙を通すことはない。
だが、番にならずとも孕ませることはできる。
牙は首筋を降りて行き、平らな胸を、愛液でとろとろになっている秘所に指が伸びていく。
メスとして作り替えられていく体。恋人じゃないアルファでもいい。とにかくこの疼きを沈めて欲しい。
欲しい。
スラックスを脱がされ、深吾は自身のベルトを緩めそそり立つ性器を取り出した。
どくどくと脈打つソレを早くいれほてしい。
赤ちゃん、作らないと。
子孫を残さないと。
足を大きく開かされ、性器が宛てがわれた。
「おい」
「うあ゛っ!!」
覆いかぶさっていた深吾が鈍い音と共に視界から消え去り、変わりにある人物が鋭い眼光で夏維を見下ろしていた。
色素の薄い髪色。鋭い目尻。何度も触って、何度もその瞳に胸をときめかせてもらえてた。
この人の子どもを孕みたい。
そう願ってたまらなかった人。
「と…だい…?」
「失せろ。これは俺のメスだ」
オメガのフェロモンをかき消すような強い言葉に、火照っていた思考が一気に冴えたのか教室にいた面々は慌てて飛び出し、広い教室には冬大と夏維だけになってしまった。
「鍵はどこだ」
「ね、ちょうだい…抱いてっ…!」
「鍵をよこせ」
「冬大ぃっ」
「…っち」
冬大は夏維をうつ伏せにひっくり返すと、夏維が待ち望んでいた熱を乱暴につき入れる。
蕩けて柔らかいソコは冬大を奥へ奥へと導くように蠕動し、きゅうきゅうと性器を逃さないように締め付け、艶かしく腰を揺らす。
荒々しい腰使いは何度も受け入れているというのに、いつもと違う。
こんなに気持ちよかったっけ?こんなにも熱くさせるものだったっけ?
「あっ…アっ!」
痺れる。蕩ける。もう、頭の中が空っぽにさせられてしまう。
だらだらと唾液はこぼれ落ち、汗は止まることを知らない。腰がふわふわする。でも、中を摩ってくる熱が快感を確実に与えてくれる。
ぐんっと首に圧迫感が走り、無理矢理背中をそらされれば、冬大は首輪を強引にずらし、うなじを晒す。
くぁ…と、牙がうなじに突き刺さった。
「あぅっ!あっあああっ!!」
電流のような痺れが、体中を駆け巡った。
なにこれ、なんなの、これ…?
細胞が、血液が、暴れだす。変えられてく。自分が、自分だけのものじゃなくなっていく。
後ろにいるオスだけが、欲しくてたまらない。
このオスの子どもが、ほしい。
「あーっ!あ!あんっ!ああ!」
はしたない声ばかり溢れてしまう。甘い痺れに、甘い匂いに、もう何も考えられない。
乱れて、抱かれて、腹の中に大量の精液を飲み込み、夏維はセックスと番になった疲れに意識を手放した。

翌日。
学園一のアルファと謳われている鈴木冬大と、オメガの佐藤夏維が番になったニュースが駆け巡った。
翌週は発情期を終えた二人が登校し、学園内は大騒ぎ。
その翌々月、体調不良で倒れた夏維の腹には新しい命が宿っているのが発覚した。
そして五年後の現在…。
大きなお腹を抱え、夏維は左手で我が子の手をつなぎ、人がごった返す駅前にてある人物を待っていた。
改札を抜けた姿が見え、息子と共に彼へと手を振る。
「冬大おかえり」
「パパ、おかえり!」
「ただいま」
スーツやネクタイを緩め、仕事疲れを感じさせない穏やかな表情で夏維と息子を抱きしめる。
あとひと月もせず生まれてくる新しい家族も、冬大の帰りを喜んでいるのか夏維の腹をぽこんと蹴り、夏維はあまりの幸せに蕩ける様な笑みをこぼした。


おしまい。
意外と書く事ができてびっくりしました(笑)
オメガバース楽しいな!これで本作りたいくらいだわ(笑)
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