日記SS

□SPY
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『幼馴染、小一からのお付き合い』(冬大+侑一)

※少しだけ子どもの残虐行為があります。


頭のネジがぶっ飛んでいるのに気づいたのは物心ついた頃だったと思う。そりゃそうでしょ、お子様向けの優しい心を育てる絵本じゃなくて、泥沼が酷いドラマとかを好んで見たりしていた時の周りの大人たちの顔に気づかないほうがおかしいっしょ?ま、俺がそういう事に聡かったのもあってか自分がなんか壊れてるんだなーってわかっちまったのも大きな理由かも。
実際その聡明さのお陰か、保育園のオトモダチは親に言われるがまま俺と仲良くなろうとしたり、まだ五歳くらいの子どもに「お父さんとお母さんに仲良くなってもらえるように言ってくれるかな?」とかおもちゃやお菓子で釣ろうとしたりする事に気づいたわけで子どもながら世知辛いなーなんて思ったりしてたのが懐かしい。
まぁ親が金融関係の社長でそれなりに権力があったら媚び売りたいのはわかるっちゃわかるけど、そんな奴らに信頼はできないんだよなぁ…。
裏切られる様はドラマで学習済み、実際オトモダチも「おまえとなかよくしたくないのに、パパがなかよくしろっていうからなかよくしてやってるんだ!」で下心あるのわかってたし、はいはいオツカレサマー。って簡単に流していた。
つかオトモダチと遊ぶくらいなら人形の手足もいだり、アリの巣に水流したりしてたほうが楽しかったし。あーあとスコップで虫の胴体とかチョンパしてたな〜。
狂った遊びを裏でしながら、表ではイイ子ちゃんをしつつ、なんやかんやで某有名私立小学校に無事入学した時に、俺は運命の出会いを果たしたんだと思う。
みなさん仲良く同じ動きをしましょうねと女教師の耳障りな声を聞き流していれば、すぐ斜め後ろに冬大がいたんだよ。
同じ制服を着てるのにさ、一人だけ生地も縫い方も違うんじゃね?って思うほど精錬されてるように見えて、しかも小一なのに年齢嘘ついてるだろってくらい落ち着いてた。
なにより冬大はどうしようもないくらい惹かれてしまう魅力が出てたんだよな。
持ち前のにじみ出るカリスマ性ってやつ?生まれ持ってのフェロモン?まぁなんでもいいんだけどさ。人の上に立つ人間ってこーゆーのを言うヤツなんだろうなって。
周りの女子も男子もチラチラ冬大見てるし、話しかけようとしてるんだけど当の本人は無視。だーれとも口聞かねぇから孤立すんだけどでも不思議なもんでさやっぱりみんな見ちゃうわけ。
でも一番惹かれたのは俺だったんだろうな。当時六年くらいしか生きてない俺がどんな人にも見たことのない冬大の異常性に胸が躍ったんだよ。
そう思ったらもう仲良くなりたいっつーか、コイツと一緒にいたら俺はフツーになれるんじゃね?って思えた。俺と同じか、もしかしたらそれ以上おかしいコイツがいれば周りへの違和感を拭える、安心感が得られるって。ほっとできるかもしれないって。
『なぁなぁ!なんてなまえ?』
『……』
『おれはかすがのゆういち、よろしくな〜』
『……』
『かみとかめとかいろうすいんだな、かわったいろしてるな』
『…うるさい』
『あ、やっとはんのうしてくれた!なぁなぁきょうだいとかいる?おれひとりっこでさ〜』
鬱陶しいくらい冬大に話しかけて、邪魔だつって殴られたらすぐ殴り返してまたへらへら笑って話しかけたりして気味悪がられたけど、やっぱり人と違うからだろうな冬大は俺にだけ心を許すようになってくれた。
学校にいる間は四六時中冬大の側にベッタリ引っ付いて時々殴り合いのケンカとか、ガチで刃物の投げ合いして怒られまくったりしたりして、夏休みを迎えた。
一週間だけ冬大の家に泊まりにいく事になって、二人で昆虫の惨殺とかカエルにあーんな事やこーんな事したりして、四季姉に木に吊るされたりしたのを思い出すと今でも震えがとまんねーや。
冬大は俺がする“遊び”を当然のように受け入れてくれて、俺も冬大がする“遊び”に『あ、コイツ頭イってるわ、よかった俺まだマシだわ』って安らぎを得れていた。
だから中学に進学する時も迷わず一緒の学校を選んで、SPYのトップになったのを聞いた時も隣にいれるように大分しごいてもらったなぁ…。
そんな冬大が夏維に手を出した時は酷く驚かされた。
あの冬大が男を抱くなんて天地がひっくり返るほどの衝撃でいくら頭がイっててもさすがの俺も手を出したいとは思わなかったし(まぁ柚子がいたってのもあるけどさ)。
もしも冬大が夏維にナニカを感じたのなら、夏維もどこか狂ってるかもしれない。仲間が増えるかもしれない。
夏維を茶化して追い詰めたら違うかもしれないと思ったのはすぐさま消えた。あははは…すげぇ、冬大お前ほんと凄すぎるよ。
強姦した相手を好きになるって夏維も十分狂ってた。頭のおかしいヤツだったよ。でも冬大が夏維の事を好きかどうかは一番知っている俺でも流石に気持ちを読むのに時間がかかったけど相思相愛、両思いに両手をあげて喜んだ。
狂ってる同士がくっつくとどうなるんだろう。もっともっとおもしろおかしいものがみれるかもしれない。それが楽しみで仕方ないなと感じた頃に夏維は姿を消した。
冬大が別の意味で壊れていくのはきつかったなぁ…。
異常性があっても冬大はまだ人間だった。それがただの見苦しい獣に堕ちた様は理想郷が音をたてて崩れたように思えた。
俺にとって冬大は精神的支柱、普通にいられる大事な存在。俺にまともな呼吸をさせてくれる必要な人間。
おれのかみさま。なんて言い過ぎかもしんないけど、それくらい大事な人だ。
ま、結局無事にくっついてくれたから俺は徐々に冬大から距離を置き始めた。
冬大と出会って救われて、柚子に出会って心の寄り代を移しつつ、冬大に安心感をもらいながらそれを夏維に渡そうって決めたから。
柚子がいれば俺は幸せな気持ちになれる。柚子と生きていく覚悟をもてた。
今まで独り占めしていた冬大を手放す時だ。冬大は俺がいなくても大丈夫なんだから。
「なぁ冬大〜」
教室の喧騒はいつもどおりで、たった五分の休憩時間に隣のクラスからわざわざやってくる同級生や下級生たちに視線を向けることすらせず俺を見てくれる。
「だいすき」
周りから、うわああああ!と野太い悲鳴が学園中に響き渡るんじゃないかってくらい飛び交う中、冬大の眉間には見たことがないほどのシワがより、口元が気持ち悪いほどひきつっている。
「なんだよーそんな顔すんなよ〜侑一傷ついちゃうぞ」
「……ついに狂ったか?」
狂った?あは。何言ってんだよ。
「狂ってなんかないよ」
だって俺は元々おかしいんだから。これ以上狂えるわけないじゃん。
なぁ冬大。夏維と一緒に狂ったままでいてよ。その生き様を夏維と一緒に踊るようにみせてよ。
俺はそれを見て安心したいんだからさ。

※補足説明
侑一は冬大に依存している。
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