お話

□生きるのを諦めないー杉元ー
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「あの、えと、杉元さん、ありがとう」
握られた手を離そうと力を緩めたが杉元は離さなかった
首を傾げてクイクイと引っ張ると歩みが止まる
「…あ、ごめん、ちょっとぼーっとしてた」
「大丈夫…?穴掘るの大変だもんね、お疲れ様杉元さん!」
「…あのさ、冠ちゃん」
「ん?」
杉元は振り向いて冠の肩に手を置く
その顔はいつになく真剣で尚且つ何処か辛そうだった
「俺は、俺はさ…故郷に助けたい人がいる
その人は目が不自由で、もう殆ど見えてない
大切な人で、どうしてもその人の目を治してやりたいんだ」
「…う、うん」
どうしてそんな事を話し出すのか冠には分からなかったが一先ず頷く
「その人が、好きだった」
「…!そ、っか」
ツキリと針が心臓を刺すような痛みに苛まれる
杉元の顔を見るのが辛く思わず視線を逸らしてしまった
「あの、大丈夫だよ!金塊見つけたらその人を助けれるよ!見つからなくても私杉元さんの為にいっぱい稼ぐよ!皆だって手伝ってくれるよきっと…」
思わず早口で言葉を紡ぐ、何故だかもう聞きたくなかった、知りたくなかった
その人の存在なんて頭に入れたくなかった




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