私もあなたも片想い

□8章
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目を覚ますと私は雪くんのベッドで寝ていた。


なんで雪くんの部屋で…。


辺りを見渡すけど誰も居ない。
窓の外を見ると真夏の蒸し暑そうな青く透き通った空が広がっていた。



「…今日から夏休みなんだよね」



ひとりごとを呟く。

そういえば昨日は階段前で頭が痛くなって、それからの記憶がどうしても思い出せない。
悪魔に体を貰うと言われたけど、私の体は至って普通だ。
妙な違和感を感じる。

足を見ると青いあざのようなものはまだ治っておらず、足に力を入れてもびくとも動かなかった。



「……」



そういえば昨日は変な夢を見た…。


夢の中で、私は雪くんを襲っていたのだ。

抵抗し、嫌がる雪くんに何度も無理矢理キスをしている夢だった。
それに燐にもキスをしたりして…。
そんな夢を見るってことは私は極度の欲求不満なのだろうか。



枕に顔を埋めた。


雪くんにフラれたからあんな変な夢見たのだろう。
そうか、私…雪くんにフラれたんだった。



「……」



枕から雪くんの香りがする。



いい匂い……。


昨日、雪くんと一緒にお風呂に入った事を思い出す。
雪くんの体を思い出し、一人勝手に真っ赤になる。



ガチャリとドアが開いた。

ハッとドアを見ると雪くんが居た。



「名無し、おはよう」



雪くんは私を見て微笑む。



「ゆっ、雪くん!」



「どうしたの?そんなに慌てて」



「なっ、なんでもない…!」



雪くんの匂い嗅いでたところ見られてないよね、
大丈夫だよね。


雪くんは私に近寄ってきた。

なんだろう、私なんでこんなドキドキして…。
フラれたのに…。



「それじゃあ、食堂に行こう」



そう言って雪くんは私の体に手を回し、私を抱きかかえた。

食堂に向かいながら私は雪くんに質問した。



「雪くん」



「なに?」



「…なんで私、雪くんの部屋で寝てたの?」



すると雪くんは少し間をおいて答えた。



「昨晩、階段前で車椅子から転倒していたんだ」



確かにそうだ、そこまでの記憶は私も覚えている。



「倒れてる名無しを起こしたら酷い熱が出ていて解熱剤を注射して熱が下がってるかどうか様子をみたかったんだ」



「……そうなんだ…、ありがとう」



「うん」



また私、雪くんに迷惑かけてしまった…。


食堂につくと燐が私を見るなり顔を真っ赤にしていた。



「…燐?どうしたの?」



「えっ!?」



なんで燐はこんなに顔を赤くしているんだろうか。



「兄さん…」



雪くんが呆れた様子で燐の名前を呼んだ。



「はっ?いやなんでもねえよ!
早くご飯食べようぜ!」



そう言って燐は勢いよくご飯を食べ始めた。



「はあ…」



雪くんは大きなため息をついていた。


なんだか二人とも様子がおかしいのは気のせいだろうか。
昨日なにかあったんだろうか。
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