私もあなたも片想い
□8章
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キャンプ前日。
私は早めに夏休みの課題を終わらそうと思い、一人自室にこもり勉強をしていた。
勉強をしながら思うのは、やはり明日のキャンプのことだ。
行くって決めたからには皆に迷惑をかけないようにしなければならない。
雪くんも来るのだから迷惑かけたらだめだ…。
コンコン、とノックの音が聞こえた。
「名無し、いる?入るよ」
ドアの向こう側から雪くんの声がした。
「うん」
私が答えると雪くんはドアを開け部屋に入った。
私を見るなり「勉強?」と質問してきた。
「うん。早めに課題終わらせようと思って…」
「そっか。偉いね」
やっぱり雪くんに褒められると嬉しいし、キュンとしてしまう。
フラれたのに諦めきれていない証拠だ…。
「雪くん、どうしたの?」
「ちょっと名無しに話しがあるんだ」
「話し…?」
「うん。明日の話し」
明日の話しってことはキャンプの話しだよね。
「夜は2人2組でひとつのコテージに泊まることになったんだけど、名無しは僕とコテージでも問題ないかな」
「え?」
……、それって雪くんと寝泊まりするってこと?
私は思わずあっけにとられる。
「名無しには申し訳ないけど、足のこともあるし一昨日も熱を出して倒れてたから心配なんだ。
嫌だったらごめん…」
前に雪くん一緒にお風呂に入った時のことを思い出す。
またあの時みたいに私ばかり顔を赤くするのは気まずいけど、雪くんからしたら私の中に悪魔がいるってわかってるからただ心配なだけなのだろう。
そこには恋愛感情もない事もわかってる。
私のことを家族として見ている雪くんからしたら、それが普通の対応だろう。
……雪くんのこと、きっぱり諦められたらいいのに。
「嫌じゃないよ、心配してくれてありがとう」
私がそう言うと雪くんは「よかった」と微笑んだ。
「それじゃあ、僕はそろそろ仕事だから行くね」
「うん、頑張ってね」
「ありがとう」
そう言って雪くんは部屋を出ていくかと思いきや立ち止まり、去り際に私の名前を呼んだ。
「名無し…」
「なに?」
「……」
ドアの前で立ち止まり、黙り込んだ雪くん。
「雪くん?」
私は不思議に思い聞いた。
「どうしたの?」
「……」
下を向いてなにか言いたそうにしている雪くん。
なんだろう。
「なんでもない」
そう言って雪くんは部屋を出て行った。
私は雪くんがなにを言いたかったのか知りたかったけど、この足じゃ追いかけることもできないため勉強を再開した。