東方幻絵巻

□最初の弟子
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〜人里〜


妖花「後は大根と……ザンにちくわを買っていきましょうか」


その頃、妖花は今夜の夕食の買い出しに行っていた。
勿論一人では無い、侍女達と妖忌、影花も一緒だ。


妖忌「母上、後は何を?」


妖花「そうですね……皆は先に戻っていて下さい。私は神無月を探しに行きます」


影花「分かりました、お気を付けて…」


そう言って妖忌、影花、侍女達は先に白玉楼へと帰っていった。
そう、妖花は幽々子に神無月を探すよう頼まれていたのだ。
幽々子曰く朝までは一緒にいた筈だとか…


妖花(二人で一体何を……いや、神無月に限ってそんな事は…)


?「もし、そこの方」


妖花が色々と考えていると後ろから女性の声が聞こえる。
振り向くと、そこには笠を被り、陰陽師の姿をした女性が立っていた。


妖花「何でしょうか?」


?「この辺りで神無月と名乗る者を見なかったか?」


妖花「神無月…?」


その名を聞いて妖花は直ぐに彼だと解ったが、教えるべきか迷っていた。
見たところ彼女は陰陽師、神無月は人間では無いと言う……恐らく何かの因果関係があるのだろう。
だが妖花が出した答えは…


妖花「…申し訳ありません、私には解りかねます」


神無月を庇った。


?「そうか……邪魔をした」


陰陽師の女性はそう言って何処かへと歩き去っていった。


妖花「……神無月…一体何処にいるの…?」


神無月「ここにいるぞ?」


妖花「ひあっ!?」


…………………………
……………………
………………


ちょっと驚かすつもりが……なんか少し涙目なんだが……ザンに怒られるな。
…にしても…


神無月「随分と可愛い声で鳴くなぁ妖花?」


妖花「わ、忘れて頂けませんか?」


神無月「無理だな」


妖花「忘れろ!」


HA☆HA☆HA☆HA☆忘れてなるものか!
この世に存在して聞けるか聞けないかの貴重な音声だぞ?忘れろと言うのが無茶な話だ!
……いや、そうじゃないだろ俺…


神無月「妖花、ありがとう」


妖花「……礼には及びません。ですがその代わり、先程の方との関係を教えて下さい」


んー……まあそのぐらいだったらいいか…


神無月「アイツの名は『安倍晴矯』……俺の最初の弟子だ」























〜記憶の欠片〜


ザアアアアア


降り注ぐ雨の中、道中の木の下にボロボロの服を着た一人の少女がびしょ濡れになって座っていた。


?「……」


たまたま見かけた天行がその少女に話し掛けた。


天行「ここで何をしている、身体に障るぞ……早く親の元へ行け」


?「……いない……そんなものは……いない…」


天行「戦で死んだのか?」


?「……」


天行「まあよい……ここにいては己を滅ぼす、早く去れ」


そう言って天行はそこを去った。
少し離れた場所から見ると、まだ少女はその場所に残っていた。


天行「……ハァ…」


再びその場所へと戻り、声を掛ける。


天行「……共に来るか?」


?「……(コクッ」


天行「先に言っておく、我と来る以上は常に死が付きまとうと思え。……それでも来るか?」


?「……(コクッ」


少女は二回とも頷く。


天行「……よかろう、名は?」


晴矯「……晴矯…」


これが二人の出会いだった。
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