東方幻絵巻
□影、再び
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パリン
神無月「あらよっと」
空間を割り、幻想郷に戻ってきた。
目の前には博麗神社、後ろには普通の湖……どうやらあの『夢幻世界』ってのはこの場所の別空間だったらしいな。
いやー、しかしあの槍が伸びるとは思わなかった……反応が少しでも遅れてたら殺られてたな…
さて、白玉楼に戻る前に霊古の顔でも拝みに行くとするか。
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〜博麗神社〜
神無月「霊古〜、お〜い……留守か?」
妖怪退治にでも出掛けているのだろうか、神社に人の気配は無かった。
……そう、『人』の気配は…こっちの方はいた。
萃香「あれ、神無月じゃないか」
賽銭箱の中からひょっこりと、鬼の萃香が出てきた。
どんな所から出てきてるんだよお前は……いや、賽銭箱から出てきたのは解るが…
神無月「霊古は今、何処にいる?」
萃香「ん?霊古だったら畑の手伝いに行ってるよ」
霊古が畑の手伝い?妖怪退治じゃなくてか……どんな風の吹きまわしだ?
神無月「なんでまた?」
萃香「あれ、もしかして気付いてない?」
神無月「何がだ?」
萃香(あちゃ〜……鈍感だったか〜…)
さっきから萃香の言っている事がサッパリ理解出来ない。何が言いたいんだ?
まぁ、いないなら仕方無いか……日を改めるとするかな…
萃香「なんなら、ここで待ってる?」
神無月「ん?だが…」
萃香「大丈夫大丈夫。確かに参拝客は来るけど、神無月はもう世間に知れ渡ってるしね」
神無月「いや、お前はどうなんだ?」
萃香「私?私は能力で姿を消せるし♪」
こいつの能力はそんな事まで出来るのか……『萃める』だのどうのこうのとは聞いた事はあるが…
確かに、今から白玉楼に行ってもアレだし……暫くの間はここにいても良いかもしれないな。
神無月「なら暫しの間、ここにいるとするか」
萃香「そうこなくっちゃ!じゃあ呑も♪」
神無月「お前は直ぐそれだな…」
萃香「いいじゃん別に、私の瓢箪からは無限にお酒が出るし」
そう、萃香がいつも持ち歩いている紫色の瓢箪からは無限にお酒が湧いて出てくる。
これと言って特別な力は無いのだが……何か中で飼ってるんじゃないのか?
本当に何で出来ているのやら…
神無月「呑み比べだったらやらんぞ?」
萃香「まだ昼間だってのに、お前さんとやるつもりは無いよ。勇儀とかだとやるけどね♪」
やるんだ!?こんな真っ昼間から!?
鬼というのは時間を問わずに呑み続ける種族なのだろうか…?
※違います。
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〜人里の外れ〜
霊古「ふぅ……たまには、ああいうのも悪くないかもな…」
畑作の手伝いをしていた霊古はそれを終えて、帰路についていた。
霊古(あんな大変な事を無償で……妖怪退治程では無いが…)
勿論、霊古も無償で手伝っていた。
当時、この幻想郷で博麗神社は唯一の神社であり、そこに住む霊古は村人達から『巫女様』と呼ばれていた。そして何故か子供達から人気が高い。
神無月「妬ましい限りだ。俺なんか直ぐに泣か(ry」
霊古が畑作の手伝いを引き受けたのには二つの理由があった。
一つは、妖怪退治以外の依頼も受けてみたかったという好奇心。
そしてもう一つはある日突然現れた神無月の事に関係していた。
霊古(あのような事をずっとしてきたのだな……神無月…)
因みに情報は萃香からだ。
そして飛ぼうとしたその時、森の奥で女性の悲鳴が聞こえた。
霊古(! 今のは…それにこの違和感……嫌な予感がする…)
霊古は急いで悲鳴が聞こえた場所へと向かった。