東方幻絵巻

□雷との出会い
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神無月「どっこらしょ……こんなもんですか?」


農民A「おーう最高だ!ありがとな!」


神無月「いえ、また何かあれば言って下さい」


農民A「すまねぇな、神無月さん」


俺は農民の依頼で畑仕事を手伝っていた。
無論、このような依頼も多かった……地味だと思っているのだろう?だがそれが俺の『万屋』だ。
そして俺が畑を後にし、帰路についているとき、森の方から妙な力を感じた。
人間ではない、かといって妖怪でもない……神に近いような感じだった。
その力が感じる方へと歩いていくと…


?「すー……すー……」


一人の少女が木にもたれ掛かって気持ち良さそうに寝ていた。
白い着物に蒼白い袴、白銀に輝く長い髪、白くふさふさの尻尾、額よりちょっと上の部分に蒼い角……明らかに人ではなかった。
その容姿は可愛いというよりは……綺麗だった。
『霊眼』で彼女を見る。
……どうりで人間でも妖怪でもない訳だ……
彼女は雷の力を持った聖獣、『麒麟』だった。


?「……ん……貴方は……?」


少女が目を覚まし、問いかけてくる。


神無月「神無月だ、こんな所で何をしてるんだ?」


?「私ですか?気持ち良くて昼寝をしていました♪」


いや、していましたって……変わってるな。
おっと、俺も人の事は言えないな。


神無月「今は昼時だからいいが……夜になる前には帰ろよ?」


?「嫌です」


ズルッ ガン


俺は思いっきりズッコケてしまった。
嫌って……


?「私は家出をしてきたんです!今さら帰るなんてあり得ません!!」


神無月「あ、あのねぇ……今頃きっと親御さんが心配してるぞ?」


?「嫌です!」


少女はムスッとしてそっぽを向いてしまった。だがこのままにしておくわけにはいかないし……参ったな……


神無月「とりあえず名前はなんだ?」


白雷「白雷と申します」


そういうところは素直なんだな……
だがどうする?居候の分際でもう一人置かせてほしいって言っても許す筈が……


幽々子「あら、綺麗な方ですね」


無いよなー…………え?
後ろを振り向く。そこに立っていたのは紛れもなく幽々子だった。


神無月「ど、どうしてここに!?」


幽々子「虫の知らせです。それよりも、私は構いませんよ?」


白雷を白玉楼に住まわせてもいい、そう言っているのだろう。


神無月「……白雷、どうしたい?」


白雷「ついていきます♪」


尻尾を振って嬉しそうに立ち上がる白雷。
……不覚にも可愛いと思ってしまった。


?「そうはいきませんぞおおおぉぉぉ!!」


突然空から大声で叫びながら人が落ちてくる。落ちてくる時点で人ではないがそこは突っ込まないでいただきたい。
落ちてきたのは頭はえたに木の枝のような角、蒼い髪に瞳、鎧姿に槍……まさか……


?「姫!なりませんぞ!何処の馬の骨ともわからぬ輩と夜を共にしようなどとはなりません!!さぁ、帰りましょう!」


ヤバイ……すごいめんどくさそう……てか馬の骨って……


白雷「青龍……私は帰りませんよ!」


この馬鹿っぽいのが青龍なの!?
正直言って幻滅だった……いや、元々だな。


幽々子「……?」


……状況を全く理解していない方が一名。
幽々子は首を傾げていた。


青龍「なりません!」


白雷「嫌です!」


白雷は俺の後ろに隠れてしまった。
お分かりいただけるだろうか?……そう、これはフラグというやつだ。
本来なら回避したいところだが…


青龍「そこをどけ、人間」


神無月「お断りだ。嫌がってる子を無理矢理連れ戻そうとは……笑止!」


青龍「貴様……言わせておけば!」


ヒュッ


視界から青龍が消えた……ように見えたのは後ろにいる二人だろう。
ん?俺か?見えてるよ、槍が俺の喉に向かって来てるのがな。
俺は親指と人差し指で槍を喉元にくるまえに止めた。
青龍が驚いた目をした、それは後ろにいる二人も同じだった。
青龍は一旦俺から距離をとり、槍を構える。


青龍「我が槍を止めるとは……貴様、何者だ!?」


そう聞かれて俺の頭の中にいくつかの言葉が過った。
『万屋』……普通すぎるから却下。
『つけもの』……駄目だ、食われる。
そして最後に過った言葉……『変わり者』……これだ!


神無月「名を神無月、『変わり者』だ!」


俺がそう言った瞬間、その場の空気が凍った。


青龍「…………」


白雷「…………」


幽々子「…………」


……俺はどこかで間違えてしまったのだろうか……?

青龍「えー……貴様、ふざけているのか!?」


その場の空気が嫌になったのか、青龍が口を割った。
ありがとう青龍、君のお陰で空気が元に戻ったぞ!


神無月「半分は真面目に答えた」


青龍「…………!」


青龍は何かに気づいたらしかったが、槍の構えを解いた。


青龍「……姫、私はこれにて」


そういって青龍は飛び去っていった。
…………バレたか……?


幽々子「行ってしまわれましたね……」


白雷「(青龍が退くなんて……)神無月……と言いましたね?」


白雷が俺に尋ねる。


神無月「ああ、そうだ」


白雷「私を……貴方の式神にしていただけないでしょうか!?」


……式神?……俺の?
言っている意味がよく分からなかった。


神無月「なんでまた?」


白雷「貴方は青龍の槍を素手で止め、戦わずして勝利しました!差し支えがなければ私を貴方の式神にして下さい!」


と言われても……畜生、美人の頼みは断れないんだよクソッタレ。
それに……約束だしな…


神無月「はぁ……わかった……麒麟白雷、お前をおれの式神として認める」


白雷「ありがとうございます!」


白雷は尻尾を振って抱きついてきた。


神無月「は、白雷!?くっつくなって!」


白雷「よいではないですか、減るものではありません!」


神無月「減る!俺の中にあるなにかが確実に減る!」


幽々子(あの白雷って子、大胆ね……私も負けていられませんね……)


…………………………
……………………
………………


〜???〜


?「お、青龍じゃんか。無理だったろ?」


青龍「朱雀か……お前はあの噂が本当だと思うか?」

朱雀「ん?『守護者』のか?あり得ないだろ」


青龍「私もそう思っていた……だが今日、『天之尾羽張』を持つ者に会った」


朱雀「な!?見間違いじゃないのか!?」


青龍(神無月……明らかに偽名だ…………調べてみる必要があるな……)
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