東方幻絵巻

□旅人
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〜大平原〜


天は青、大地は緑、ここは何もない大平原。
その大平原のど真ん中で大の字になって寝ている者がいた。
その者の名を『神無月』、各地を気ままに旅してまわっている旅人だ。


神無月「あ〜のどかだねぇ……何処だか知らないけど」


そう、彼は今迷っていた。
だがその事を全く気にしていない。それが普通だと思っているからだ。
只旅をしている訳でもない、彼は『万屋』としても動いていた。
その内容は簡単な畑仕事から妖怪退治まで。だが、知る人ぞ知る『万屋』なので噂でのみ語られる存在だった。


神無月(……このまま寝てしまってもいいかな…)


そう思って神無月はその場で眠ってしまった。


…………………………
……………………
………………


?「…………」


声が聞こえる。しかし、まだよく聞き取れない。


?「……し、…方…」


少しずつ聞こえてくる。
女性の声のようだ。


?「もし、そこの方」


……どうやら呼ばれているらしい。
神無月は目を開ける。
そこにいたのは女性だった。だが、普通ではない。
一言で言うなら、美人だった。
桜の色の長い髪、空のような透き通った瞳、色白な肌、すべてが綺麗だった。


?「ここで寝ていると風邪を引いてしまいますよ?」


神無月「え、ああ、気持ちよくてつい…」


神無月は照れ臭そうにそう答える。


?「ふふふ、変わっていますね。旅の途中ですか?」


神無月「ええ、まあ……あ、神無月といいます」


幽々子「神無月さん……素敵なお名前ですね。私は西行寺幽々子と申します」


神無月「西行寺…」


幽々子「幽々子で構いませんよ。ではまた、貴方とはまた何処かで会える気がします」


そう言って幽々子という女性は去っていった。
神無月はその姿を見て思った。


神無月(右手に刀……あれは普通の刀じゃないな…妖力が混じってた。……だが、美しかったな…不思議な人だ…)


神無月は立ち上がり、再び歩き始めた。
そしてこの大平原こそが…後に『無縁塚』と呼ばれるようになるのはまだ先の話…
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