東方幻絵巻

□雨音
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〜白玉楼〜


妖花「幽々子様…」


幽々子「フフ……そんな顔をしないで妖花、いつか来ると思ってた事だから……それにこの残り短い命、皆の為に使えるのなら本望です」


重臣A「幽々子様、仕度が整いました」


幽々子「分かりました……皆…さようなら」


…………………………
……………………
………………


神無月「よし着いた」


白雷「やっと追い付きましたよ…」


神無月「いや、すまんすまん」


嫌な予感がした為、俺はちょっとした事をして白玉楼に到着。
白雷は少し遅れて来た。


神無月「あまり考えたくは無いが……急ぐぞ」


白雷「はい」


俺と白雷は急いで広間に向かい、襖を開く。だがそこに幽々子はおらず、いたのは妖花と数名の侍女達のみ…侍女達に至っては何名か泣いていた。


神無月「幽々子殿は何処へ?」


妖花「神無月ですか…………幽々子様は只今出掛けております。ご用でしたら私が…」


神無月「……片道切符のお出掛けか?」


妖花「っ!?……ご存知でしたか…」


やっぱりか……お人好しの幽々子だからとは思っていたが…!


白雷「ち、ちょっと待って下さい!幽々子様が生け贄になられるのですか!?」


妖花「それがあの方のご意志です……民の為ならば、己の命を惜しまぬあの方の…」


神無月「生け贄に民は出したくない、出すくらいなら自ら生け贄になると?」


妖花「そうです」


確かにその考え方は間違ってはいないかもしれない……だが…


神無月「……本当に民の事を思っているのなら、そんな行動はしないと思うがな」


妖花「!?貴様、幽々子様を愚弄するか!!」


妖花は立ち上がり、俺の胸ぐらを掴む。突然の事に白雷は少しオロオロしている。
侍女達の表情からも怒りが伝わってくる。それもそのはず、自分達の主を馬鹿にされたのだ、怒るのも無理はない。


神無月「貴女達からすれば私の言葉はそう聞こえるかもしれない。ですが前言を撤回するつもりはありません」


妖花「!……このっ…!」


侍女A「妖花様、お止め下さい!」


妖花は刀を抜き、俺に斬り掛かろうとするが、侍女の一人が止めに入った。


侍女A「妖花様、心を鎮め下さい!ここで神無月様を斬ってしまっても変わりません!」


妖花「そんな事は分かっている!分かって……!」


そこまで言うと妖花は刀を落とし、泣き崩れた。


神無月「……仮に幽々子様が亡くなったとしましょう、そしたら動き出すのは北神家です。今は大人しくしていますが、いつ牙を剥くかは分かりません……ですがこれだけは言えます、北神家がこの土地を治めた暁には、民の平穏は永遠に来ません」


幽々子が死ぬと得をするのは北神家、それに生け贄を捧げたところで雨は恐らく降りはしない。
本来なら雨乞いの時点で降らないのがおかしいぐらいだ。


神無月「……私は次の依頼があるのでこれにて…」


俺はそう言って広間を出る。すると…


パチン


広間から白雷が出てくるなり俺の頬を叩いた。


白雷「こんな時にまで依頼ですか!?皆さんが苦しんでいるというのに何をそんなに悠長な事を仰るのですか!?」


あまり怒る事の無い白雷は俺に怒鳴る。
いや、これが普通の反応なのだ、咎めるつもりもまんざら無い。
だが白雷、この依頼はどうしても外せないんでな…


神無月「好きなだけ殴れ、俺は依頼を全うするだけだ」


白雷「!…貴方って人は…!」


白雷は何かを言いかけるが、俺はお構い無しに歩み始める。


神無月「……依頼内容はこの土地一帯に雨を降らせ、生け贄となっている西行寺幽々子の救出。依頼主は……神無月」


白雷「え…?」


神無月「美人が泣いているのを黙って見てる程、俺は落ちぶれてはいないのでな」


この依頼、必ず成し遂げてみせるさ。
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