Dream No.1

□exeo
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こうして存在している世界が嘘と言うのなら、今枕に顔を埋めている私も嘘になるのだろうか。
「どうかね」
どうかね、と言われても…ど
『…誰だ?』
なんだか、知っている声がしたが、気のせいか。ああ、夢か。私はいつの間にか再び眠りについたのか。私にはよくあることだ、これは夢だと気付くこととか、明晰夢だとか。
これは夢なので、アーカードさんであろう声の主に毒を吐くことにした。
『おい、お前。お前って赤い帽子と赤いサングラス掛けると赤トンボになるアーカードってやつだよな。蚊みたいにちゅうちゅう血吸ってる吸血鬼の。暴君の大飯食らいの我が儘のセクハラじじいの。600年間女無しの。ヘルシング邸の吸血鬼にもなれなかったグールたちのゴミ処理係をしている。インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングの下僕で、セラス・ヴィクトリアを子に持つ。大将軍時代は串刺し公、悪魔、ドラクルと呼ばれていて吸血鬼の王様でウォルター・c・ドルネーズと共に50年前にミレニアムに乗り込んで…』
「話が長い、もう喋るな。」
『ごめんなさい。』
「しかし、何故そこまで知っている?」
―この女からは敵意も何も感じられん。澄んだ水のように純粋に感じる。
『女はいくつもの秘密を纏っているものよ。』
上半身を起こし、ふふ、と悪戯っぽく笑うladyにアーカードは鼻を鳴らした。
『1つだけ言うけれど、それを知りたかったら私をここに住まわせてくれるようにインテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング局長さんに頭を下げて。そしたら教えてあげる。』
これは夢なので、強気で行けるのはありがたく思う。夢でなかったら私死んでるわね。でも、それでも良いかもしれない…。
「良いだろう。」
『じゃあ、決まり。私lady。よろしくね。アーカード。』
「呼び捨てとは良い度胸だな、お嬢ちゃん。」
子供扱いされたようでladyは不服な表情をした。
その様子を見たアーカードは面白いものを見るように薄く笑った。
話に肩が付くと部屋の扉がガチャリと開いた。
「起きたようだな。」
褐色肌に絹のように滑らかな金髪を振りながら家の主のインテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングが入ってくる。
続いて、跳ねた金髪のにゃんこのような元気さを持つセラス・ヴィクトリアに、老いを持ってしても若々しさがある家主の執事であるウォルター・c・ドルネーズが入ってくる。3人はそれぞれ私に自己紹介してくれた。私はお返しに自分の名前を紹介した。
「アーカードから聞いたとは思うが、お前は森の中で倒れていたんだ。それを、アーカードが見つけて今ここに至る。感謝しておくんだな。」
そうだったのか。聞いてないぞアーカードさん。
アーカードをちらりと見やると喉を震わして目を細め、こちらを見ていた。
ladyはそれを無視した。

待てよ…なら土が付着しているハズだし、服には泥か何かが染みていたりするハズだが…
…まあいいか。女性のメイドさんが整えてくれたのだろう。
そうでないとしたら、なんて考えるのは虚しくなるだけだから止めておくか。
『赤、アーカードさん。
ありがとうございます。』
ladyは深々とアーカードに頭を下げた。
「それと、お前にはこのヘルシング家で暮らしてもらう。」
『え』
良いのだろうか、夢なのに、夢にすぎないけれど、確かにアーカードにはああ言ったけれども、そんな短時間に実行出来るとは思えないし…
……まさか、あらかじめインテグラさんに言っていたのか…?
アーカードを再びちらりと見やるlady。アーカードは頷く代わりに笑みを濃くした。
確信した。アーカードさんは私と口約束をする前に言っていたんだ。
帰る場所も無い今だから、その心配をするのは無駄だということになったな。しかし、インテグラさんが納得する理由を言ったワケだから、何を理由としたのだろう。
「家も親戚も、どこにも無くなってしまって苦労だな。」
インテグラがladyに声をかける。
あら、そう思わせるような難しい顔しちゃってたかしら。
てか、そういうコトになっているのね私。
『すみません…。ここに住まわせてもらうだなんてそんな偉そうなこと…私、申し訳無いです…。』
今のうちに、帰る場所はここだと、確実なものにしなくては、先が面倒だからな。私が不利にならないようにしなくては。
ladyは顔を伏せる。
「そう畏まるな。今日からよろしく頼んだぞ、lady。」
『はい、皆さん!よろしくお願いいたします!』
一番得意とする笑顔を私は彼らに向けた。
これで私はヘルシング家を自分が帰る場所に出来たようだ。
第一段階完了、と言ったとこかな。
よろしくね、夢の中のヘルシング家御一行様方。


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