苛めたい位君が好き

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「お前、やっぱ伊達眼鏡じゃなくて本当の眼鏡掛けた方がいいんじゃねえか」

「それ、どない意味や」

「そういう意味だ。分かれよ」

「ちっとも分からへん」

「あ、あの…」

「なんだよチビ猫」

「ごっ、ごめんなさい。あの、冴えなさ過ぎる私が悪いんですよね。それを謝るので喧嘩は止めて下さい」

「あーん?調子に乗んな。何で俺様がお前みてえなダサ子の為に喧嘩しなきゃなんねえんだよ」

「おい、跡部。お前言い過ぎやで」

「チッ…大体何なんだよこの瓶底みてえな黒淵眼鏡とお下げは」

跡部は名無しさんに詰め寄り髪を結っていたゴムを外し、眼鏡を取り上げてしまった。
眼鏡を外されてしまった名無しさんは恥ずかしさのあまり、咄嗟に顔を俯けようとしたがそれを跡部が許す筈もなく顎を掴まれてしまった。
眼鏡を外した名無しさんは、跡部の想像以上に可愛らしい顔立ちをしており、跡部は思わず頬を熱くさせてしまいながらその顔をじっと見据えた。

「あ、跡部君っ」

「か…可愛いじゃねえの」

「も…ゆ、許して下さい。お願いですから」

これはあれか。
自分にもっと苛めて欲しいと、そう捉えていいという事なのか。
そうじゃなかったら普通こんなに頬を赤く染めて、そして自分を見つめながらこんなにも目を潤ませる訳がない。
このまま更に苛めてやりたいという嗜虐心を何とか抑えながら跡部は舌打ちを吐いたあと名無しさんの顎から手を離した。

「あ…あの…」

「おいチビ猫」

「は、はい」

「お前確か名無しさんと言ったな」

「そうですけど…あの?」

「喜べ。お前を今から雌猫から人間に昇格してやる」

「め、めす…え?」

「つまり景ちゃんも名無しさんと友達になりたいっちゅう事や」

「そっ…そうなんですか!?ぜ、是非お友達になって下さい跡部君っ」

「ハッ…まあ俺様が言ってんのはそういう意味じゃねえがお前がどうしてもと言うならなってやらなくもねぇ」

「嬉しいです!これから仲良くして下さいね跡部君」

そう言って、跡部の手を両手で握り締めながら花が綻ぶような笑顔を見せる名無しさんに跡部は再び顔を熱くさせてしまいながら鼻を鳴らした。
その様子を面白くなさそうに見ていた忍足は、跡部から名無しさんを離し、今度は自分の腕の中に名無しさんを閉じ込めてしまった。

「狡いやん。跡部とばっか仲良うして」

「ご、ごめんなさい侑士君。私そんなつもりは…」

「それに前にも言うたやろ?俺以外の奴に簡単に眼鏡外されんように気ぃつけろって。名無しさんはこ〜んなに可愛いんやから悪い虫が付いたら困るやん」

「…付かないので心配なさらなくて大丈夫ですよ」

「付いたやん。今さっき」

「それは俺様の事かよ忍足。この俺様を虫扱いするとはいい度胸じゃねえの」

二人共笑顔を見せているが、言葉の1つ1つに刺が入っており、再び喧嘩が始まりそうな雰囲気になった事を察した名無しさんは、忍足の腕の中から抜け出し二人を見据えた。







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