お姫様と殺し屋
□episode1
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「ちょっと〜、何か流れ着いてるわよ」
「あら、本当だわ!」
「やあ、イトウ君とタンノ君」
「パプワ君じゃない」
「ねえ、シンタローさんはいらっしゃらないの?」
「シンタローならあそこに居るぞ」
パプワと呼ばれた少年は、いつも常備している扇子を向こう側に指した。
指し示した方向には、大きな篭を背負った黒髪で長髪の青年がげんなりとした表情を浮かべながら青い玉の首輪を付けた犬と共にパプワの元へ歩いて来ている所だった。
それを見たカタツムリのナマモノのイトウと、魚なのに足がはえている同じくナマモノのタンノが目をハートにさせながらシンタローの元へ勢い良く迫ってきたので、シンタローは思い切り眉間に皺を寄せた。
「シンタローさ〜ん!」
「今日もす・て・き〜ん!」
「煩えぞナマモノ!こっちに来んじゃねえ!!」
「きゃ〜!!」
「今日もシンタローさんの愛がい・た・い〜ん!」
「チッ…いつも殴られ蹴飛ばされてんだからいい加減学習しろ。このナマモノ共が」
「キャンキャンッ!」
「ん?どうしたチャッピー」
「クゥ〜ン」
「何かあるのか?」
シンタローはチャッピーと呼ばれた犬と共に再び歩き出した。
辿り着いた先にはパプワが座り込み、何かを見ていたのでシンタローは首を傾げながらパプワに話し掛けた。
「どうしたパプワ」
「僕とお前と同じ人間が居る」
「人間〜?」
「けど僕とお前と何かが違う」
「はあ?なんなんだよそれ。どれ」
シンタローが視線を下ろすと、そこにはまだ少女だと呼んでいい年頃の少女が気を失い砂浜に倒れていた。
何故こんな所に少女が倒れているのか。
いいや、そんな事はどうでも良い。
漸くこの島で初めての人間の女に会えた事にシンタローは涙を流しながら喜んでいた。
「ううっ…漸く俺の願いが叶った。神様、ありがとう!」
「チャッピー、餌」
「わう〜!」
「ぎゃ〜!!ぱっ…パプワ!何もしてねえのに何で俺が頭噛まれねえといけねえんだよっ」
「お前今良くない事考えてたろ。だからだ」
「あんたはエスパーですかい!!」
「相変わらず騒がしい奴だな」
「騒がしくさせてんのは誰だっつの!つうかこの女の子どうすんだ」
「パプワハウスに運ぼう。お前、運んでやれ」
「は〜いはいはいはい。どうせそんなこったろうと思ったよ」
シンタローは溜め息を吐き出しながら少女を抱き上げようと手を伸ばした。
が、水に濡れたせいか服からは下着が透けており、このままでは流石に目のやり場に困ると思いシャツを脱ぎ、それを名無しさんに掛けてやったあと今度こそ抱き上げた。
それにしても、女とはこんなにも柔らかくいい匂いがするものだったか。
この島に流れ着いてから全く女に触れられる機会がなかったし、こうして今触れられるのはもしかしたら夢なのではと思いながらもシンタローは再び涙を流し、そして鼻からも血を流し笑みを浮かべていた。
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