番外編
□可愛い君は赤ずきん
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「あ、皆さんも丁度お風呂から出た所なんですね」
「名無しさんじゃねえか。ふん、そんな事を言っているが実は俺様が出てくんの待ってたんだろ?」
「え、いえ私達も…」
「きゃ〜!リョーマ様もいらしてたんですね。湯上がりもまた格好良いです〜!」
「とっ…明ちゃん!声が大きいよ〜」
「リョーマ様〜やって。越前、自分中々やるやん」
「自分が騒がれないからっていちいち俺に絡まないでくれないっすか?」
「ちょ…待て待て。俺だってきゃーきゃー騒がれる時位あるわ」
「おいてめえら。さっきから煩えんだよ。名無しさんと俺様の話の邪魔するんじゃ…」
「ダサ子さんじゃないっすか!へえ、おさげじゃなくて外してんのも中々いいじゃないっすか」
「そ…そうですか?」
「本当だ。名無しさんはおさげでも可愛いけどそっちの方がもっと可愛いね」
「精市君ったら…」
「おっとわりい!手が滑っちまったぜい」
「きゃあっ!」
「「「なっ…!?」」」
もうそれはお約束と言ってもいいのではないだろうか。
風呂から出た丸井がこっそりと名無しさんの背後に近付き、ジャージのズボンを下げてしまったのだ。
下げられてしまったのだから、当然名無しさんの下着は部員達にも見えてしまい、全員一斉にそれを見たまま固まり顔を熱くさせてしまった。
それにしても名無しさんは顔に似合わず何といやらしい下着を着けているのか。
淡いパープルのフリルのついた下着だなんて、自分達には少し刺激が強過ぎる。
部員達は名無しさんの背後でにやにやと笑う丸井に鋭い視線を向けつつ、良くやったと内心では思っていた。
「まっ…丸井さん!な…何て事してくれるんですかっ」
「まあまあ、ガムやるからそう怒んなよい」
「怒りますよっ。そ…それにどうしていつもこんな事するんですか」
「そんなの決まってんだろい。見たいからだぜい」
「何ですかそれは…」
「それより、お前ちょっと俺に付き合えよい」
「どど…どうしてですか」
「お菓子食べながら交流深めようと思ってよい。な、いいだろい?」
「お菓子…ですか?」
「そうだぜい。一杯あるぞ〜。チョコレートとかクッキーとか饅頭とか…」
「お…お饅頭ですか?いっ…行きたいです!」
「ブン太。抜け駆けとは頂けないナリ。俺も行くぜよ」
「あ、そういう事なら俺も行くっす!」
「で、ではあの…皆さんで一緒にというのはどうでしょうか。それなら皆さんも交流を深められるでしょうし」
「私も名無しさんさんに賛成で〜す!桜乃も行くでしょ?」
「う…うん」
「なら食堂に行かへん?あそこだったら大人数でも大丈夫やろうし」
「それは俺達も行ってもいいのかな?」
「いいっすよ!ね、丸井さん」
「しょうがねえな。こうなったら全員でもっと交流深めようぜい」
「行きたいのは山々なんだけど、俺達はこれからミーティングだからまたの機会に行かせて貰うよ。ね、跡部と手塚」
「…ああ」
「チッ…おい名無しさん」
「は、はい」
「お前、約束はちゃんと覚えてんだろうな」
「勿論です」
「ならいい」
素っ気ない態度の跡部に名無しさんは首を傾げてしまったものの、早く行こうと言わんばかりに朋香に手を引かれてしまったのでそのままその場を部員達と共にあとにしていった。
また自分は跡部を怒らせてしまったのだろうか。
確かに跡部の立場になってみると、ミーティングがあり、来たくても来れないその状況を考えれば面白くなくなってしまうのも分からなくもない。
丸井に頼んで、お土産としてお饅頭を少し分けて貰ってそれを後で跡部に渡そう。
名無しさんはまたしても素晴らしい程の勘違いをしているにも関わらず、それに気付かないままうんうんと1人で頷いていた。
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