苛めたい位君が好き

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「い…痛…」

「けっ…けけ…けしからんぞ名無しの!!」

「ひいっ!」

「コートでそのような不埒な格好をするとは何事だ!!」

「ごごっ…ごめんなさい!」

「真田。名無しさんが怖がってるじゃないか」

「む…むっ。すまん、つい…」

「ククッ…名無しのも中々いい物見せてくれるナリ」

「ど…鈍臭そうと思ってたっすけどマジで鈍臭過ぎっすよダサ子さん」

「み…皆さん、レディが困っているというのに手を貸さないとは何事ですか。名無しのさん、お手をどうぞ」

「あ、ありがとうございます柳生さん」

「おい。眼鏡ずれてんぞ」

「…重ね重ねすみません」

ジャッカルにそう指摘された名無しさんは1度眼鏡を外し、ネジが緩んでいないかを確認する為に眼鏡を真剣な表情で見つめていたが、幸村以外の部員達は名無しさんの変貌ぶりに目を見張らせてしまっていた。
嘘だろう。
眼鏡を外したらこんなにも変わってしまうなんてそれはもう詐欺の域ではないか。
こんなにも美少女ならば何も分厚い眼鏡などしなければいいのに。
そんな部員達から名無しさんを隠すように幸村は名無しさんの前に立ち、その手から眼鏡を取り、名無しさんに掛けてやった。

「ふふ、駄目じゃないか名無しさん。そんな姿を皆に見せちゃ」

「え?」

「つ…つうかよい。お前なんでそんなかわ…いや、眼鏡なんて掛けてんだよい。コンタクトの方がいいんじゃねえか?」

「コンタクトは持っているのですが、どうも苦手で…」

「そのお気持ち、良く分かります」

「いいデータが取れた。礼を言うぞ名無しの」

「で…データですか?」

「成る程。通りで氷帝の奴らが過保護な訳じゃ。納得したナリ」

「ダサ子さん、あんた眼鏡じゃない方がダサくなくていいんじゃないっすか?」

「そうは言われましても…あ、すみません。そろそろ私、戻らなければならないのですが」

「そうだったのだな。引き止めてしまってすまなかった」

「いえ…それでは失礼し…」

「待って。さっき転んだ時に擦りむいたんじゃない?手当てしてあげるから一緒に医務室に行こう」

「けれど、怪我をした時は氷帝の皆に報告しろと…」

「ふふ、名無しさんって本当馬鹿だね。馬鹿正直にあんな変態共の所へ行ったら手当てと称して何されるか分かったもんじゃないんだから行かなくていいんだよ」

「あ」

やけににこにことしながら名無しさんを医務室へ連れて行く幸村に、部員達は理由は分からないが、あれは相当機嫌が悪いなと思いながら二人の背中を見据えていた。
それにしても幸村は知っていたのだろうか。
名無しさんが眼鏡を外すとまるで別人のように変身してしまうという事に。
だからあんなにも名無しさんにちょっかいを出しているのか。
普段は天才だ、神の子だと言われている幸村もどうやら恋愛面では不器用になってしまうらしい。
そう思いながら部員達は一斉に顔を見合せ、思わず苦笑してしまった。








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END




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