苛めたい位君が好き
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「おい名無しさん。いい加減起きろ」
「…んっ…も…あと5分だけ寝かせて下さい…」
「ほう、そうか。なら俺様はその5分間お前を好き勝手していいという訳だな」
跡部は喉を鳴らしながらベッドに上がり、名無しさんに顔を近付けキスを落とした。
勿論1度だけではない。
5分間だけとは言わず名無しさんが起きるまで何度だってこうしてキスを落とし続けるつもりだ。
一回二回と重ねるごとに、深くなっていくキスに流石に名無しさんも目を覚ましたのか目の前にある端正な顔をみた瞬間頬を赤く染めてしまった。
「けけ…景吾君何しているんですかっ」
「あーん?何って何してるに決まってんじゃねえか」
「そうではなくて朝からそのような事をするのは…」
「そのような事ってどのような事だよ。ああ、もしかして昨日みてえな事の事言ってんのか?」
「け…景吾君!本当に止めて下さい」
昨夜の事を思い出したのか、名無しさんは頬を赤く染め上げたままベッドから起き上がった。
そうだった。
昨日自分は未遂とはいえ跡部と中学生らしからぬ事をしてしまったのだ。
それを思い出してしまうととてもではないがこの少年の顔を直視出来ない。
なのに跡部はどうだろう。
平気な顔をして、今だって意地悪な笑みさえ浮かべている。
名無しさんは跡部に聞こえないような小さな溜め息を吐き、ベッドから下りた。
「何処行くんだよ」
「…まだ時間があるようなのでお風呂に入ってきます」
「そんなんここで入ればいいだろ」
「いえ、着替えなくてはいけないですし1度部屋に戻りますね」
「なら俺様もお前の部屋に行くから一緒に入ろうぜ」
「え」
「だから一緒に風呂に入るかって聞いてんだよ」
「むむ…無理ですそんなのっ」
「何が無理なんだよ。俺様は昨日お前の至る所を見て…」
「そっ…それじゃあ景吾君。また後でお会いしましょう」
跡部の言葉を遮るように名無しさんはそう言いながら部屋をあとにしていってしまった。
跡部はそんな名無しさんを見据えながら意地悪な笑みを浮かべていた。
昨日あれだけ自分にあんなに厭らしい表情や声を見せて聞かせていた癖に今日の名無しさんはどうだ。
まるで昨日の事などなかったように、恥ずかしがって逃げるようにこの部屋を出ていってしまった。
自分的には嫌いと言われなかっただけまだいい方だが。
跡部はそんな事を思いながら可笑しそうに鼻を鳴らしていた。
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