苛めたい位君が好き

□favorite4
1ページ/13ページ

「はよおさん跡部」

「おはようございます、跡部さん」

「ああ」

「ん?流石に名無しのは休みか」

「クソクソ!んなもん当たり前だろっ」

「そうですよ宍戸さん。昨日の今日で学校来てたら相当の馬鹿ですよ」

「あれ…だけの事…が…ありました…し」

「ねえねえ跡部。名無しさんは大丈夫なの?」

「あ、皆さんおはようございます」

「「「え」」」

着替えを終えたのか、名無しさん用にと作った個室から名無しさんがいつもと変わりない笑顔を見せながら顔を覗かせたので、部員達は大きく目を見開いてしまった。
その様子を見ていた跡部は、大きく溜め息を吐き出した。
今朝自分も昨日の今日で、しかもまだ生々しい傷痕が残る体で学校に行ける訳ないだろうとしつこい程説得したのだが、名無しさんが絶対に行くと言って頑として言う事を聞かなかったのだ。
見た目によらず頑固な名無しさんに、とうとう根負けしてしまいこうして朝練にも連れてきた訳だが、先の日吉の言葉を借りるなら自分も名無しさんも相当な大馬鹿者だと思いながら跡部は眉間に皺を寄せた。

「え、何で名無しさんさんが居るんですか!?」

「つうかお前、大丈夫なのかよっ」

「はい、もう大丈夫ですよ。ご心配をお掛けしてすみませんでした」

「いやいやいや、ぜんっぜん大丈夫そうに見えないC〜!」

「日吉の言う通りいたな相当な馬鹿が。つうか馬鹿プラス激ダサだぜ」

「おい、跡部」

「あーん?」

「お前何で名無しさんん事学校に来させとるんや。休ませるんが普通やろ」

「チッ…俺様だってあいつに休めと言ったが行くと言ってきかなかったんだよ。あいつ、あんな地味でだせぇなりしてる割に相当な頑固者でな」

「ああ…そう言われてみると確かに名無しさんはそない性格やったわ」

忍足は部員達に囲まれる名無しさんに苦笑しながら視線を向けた。
自分は2年間あの少女と同じクラスだった訳で、負けず嫌いで1度言い出したら聞かない性格だという事を1番良く知っている。
見た目と異なる名無しさんのその芯の強さが少女を気に入った理由だし、何より惹かれた理由だ。
それにこの跡部だって、言った事は必ず有言実行する男だという事もよく知っている。
先程から眉間に皺を寄せる跡部を見る限り、きっと学校に行く事を相当反対したに違いない。
まさかこの跡部を根負けさせる程強情だったとは思いも寄らなかった。
まあ、跡部の場合少なからず名無しさんを想っているようだし、惚れた弱味というのもあったのだろうが。
忍足は、やれやれといった風に首を振るったあと跡部の肩に手を追いた。

「そない怖い顔すなや跡部。名無しさんに怖いですって泣かれんで」

「この顔は生まれつきなんだから放っとけ。ったくあいつときたら俺様がどんな思いで一夜明かしたかちっとも分かってねえ」

「ククッ…しゃあないやろ。鈍いのは行動だけやなくて中身もなんやから。お前はライバルやけど一応同情しといてやるわ」

「ふん…んなもんいらねえよ」

「全員揃っているか」

「榊監督、おはようございます」

榊が部室に入ると、今まで名無しさんを囲んでいた部員達は慌ただしくソファに座り自分を見据えてきたので、榊はそれに頷き名無しさんに視線を向けた。






.
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ