お姫様と殺し屋

□episode9
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「この沼なんか怪しいぞ!」

「んっ?何か光ったぞ!」

「急げっ!」

「きゃあああ!お客様がたあーくさん!!」

「ぎっ…ぎゃああああ!!!」

ガンマ団の隊員達は、沼から出てきた大ザリガニの薫に驚き思わず悲鳴を上げてしまった。
一方、森の中で秘石を探していた隊員達はその悲鳴に首を傾げていた。
全く、ガンマ団隊員という者がありながら悲鳴を上げるとは情けない。
自分達は常に冷静でいなければならないという事を忘れているのではないか。
隊長は、眉間に皺を寄せながら再び森の奥へと足を進めていった。

「たっ…隊長!怪しい穴を発見しました!」

「なに!?よし、行くぞっ」

「ちょっとちょっと!なんなんだい君達は!人が折角気持ち良く昼寝していたというのにっ」

「なっ…なんだぁ…!?」

「ああ…穴からきょっ…巨大ミミズが…!」

「あわわわっ…」

「え〜い!巻き付いちゃえっ」

「んぎゃあああ!!!」

「たっ…隊長がっ…く…仕方ない!我々だけで森の奥へ…」

「その先は駄目!行っちゃ駄目!」

「誰だっ!」

「私達は、森の妖精。悩めるハエハエブラザーズ!」

「は…蝿がしゃ…喋った…」

「な…な…うっ…わあああ!!!」

隊員達がパプワ島の動物達に驚き襲われているその頃、パプワハウスではパプワ達と共にマジックも夕飯を食べていた。
シンタローがそれに食ってんじゃねえよと心の中で呟いていると、勢い良く家の扉が開かれた。
そこからぼろぼろになった隊員達が雪崩れ込んできたので、マジックは眉間に眉を寄らせながら隊員達を鋭い視線で睨み付けた。

「なんだお前達!食事中なのに騒がしくするとは何事だ!」

「え…そこですか?」

「総帥〜…」

「ん?お前達なんなんだその様は」

「だ…駄目です。この島は化け物だらけです」

「何を馬鹿な事をっ!」

「「「ハロ〜!」」」

「なっ…なにぃ!?うおおおっ!!」

隊員達の言葉を馬鹿馬鹿しいと思いながら聞いていたマジックは、目の前に現れたナマモノ達に目を剥いてしまう程驚き、隊員共々パプワハウスから逃げ出していってしまった。
いくら総帥といえども、この島の動物達を見ては驚いてしまうのも無理はないだろう。
名無しさんは、哀れみの視線を向けながらも漸く元通りの平和さを取り戻したかと思い安堵の溜め息を吐き出した。

「あーあ、行っちゃった」

「ったく、迷惑な野郎だぜ!」

「わう!」

「なんだかドッと疲れちゃったね」

「ああ。ちょっと早いが風呂でも沸かすか」

「それならば僕は外でんばば踊りでもするかな。チャッピーも行こう!」

「わう〜!」

「お〜お〜、ガキはいいねえ元気で」

「あ…あの、シンタローさん」

「ん?なんだ」

「その…シンタローさんのお父様に私の事を恋人だって言ってくれて嬉しかったよ。ありがとう」

「え、いや…まあ。そりゃ隠す事じゃねえしよ」

そう言って嬉しそうに笑う名無しさんにシンタローは照れ臭そうに頬を指でかき、顔を熱くさせてしまった。
そんなに恋人だと言われるというのは嬉しい事なのだろうか。
まあ幸いな事に父親にも名無しさんの事を気に入って貰えたようだし良かったといえば良かったが。
それにしても、奴は結婚だの孫だの好き放題言ってくれていたが名無しさんが自分の事をそこまで想ってくれているかの保証などどこにもない。
けれど、名無しさんがもしもそれを受け入れてくれる日が来たらその時は…
シンタローは、名無しさんを自分の腕の中に閉じ込め口元に笑みを浮かべていた。






「episode9」


END


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