お姫様と殺し屋

□episode9
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今日は4月1日、エイプリルフール。
この日だけは嘘を吐いていい日だという事で、パプワハウスでも緊張した空気が流れていた。
名無しさんは特にそういった事に興味がないのか、お茶を飲みながらシンタローやパプワ、そしてチャッピーに視線を向けていた。

「は〜い、名無しさんちゃん」

「あ、イトウ君こんにちは」

「凄まじい緊張感ね」

「そりゃそうよ。なんたって今日はエイプリルフール!いかに相手を上手く騙そうかと皆必死なのよ」

「まさにたぬきときつねの化かし合い!」

「そんなに必死になるものなのかなぁ」

「あ!チャッピーが動いたわ!」

「わう!」

「なんだチャッピー」

「どうしたのかなぁ?」

「バウバウ!」

「ん?何なに?ミヤギから取れたササニシキだって!?」

「はっはっは!甘いなチャッピー!」

「そんなみえみえの嘘はいかんよ!ミヤギから取れるのは仙台銘菓“萩の月”だろう」

「わう〜」

「ところでシンタロー」

「来たな…!なんだ」

「日本へ帰してやるぞ!」

「おのれも見え透いた嘘を吐くんじゃない!!」

「え」

パプワの口から“日本”という言葉が出てきた瞬間名無しさんは動きを止めてしまった。
やはりそうだったのか。
少し日本人離れをした顔立ちや身長だったから、国籍は実は違うのではと思っていたがどうやら一緒だったようだ。
そういえば最初に会った時に、自分の事を何処かで見た事があるとシンタローは言っていたが素性を知られてしまっているのだろうか。
だが、シンタローの態度を見る限り気付かれてはいなさそうだ。
いや、そう信じたいのだ。
名無しさんはそんな事を思いながら複雑な表情でシンタローを見据えていた。

「ったく…二人ともバレバレだぜ!ところでだな。昨日地震があっただろ?あれは地下に住んでいる大モグラのせいなんだぞ!」

「へえ」

「わうー」

「ククッ…騙されてる騙されてる。所詮は子供よ」

「よく知ってたなお前」

「どぅわぁぁぁぁ!!」

「流石シンタロー!大人だな!」

「ああ゛!俺の馬鹿!!」

「わっ…!凄く大きいモグラさん」

「どうも初めまして。私こういう者です」

「あ、これはご丁寧に。ええと、モッ君さんですか?」

「はい。言っときますがヘアーは出してませんよ。ちゃんとパンツはいてます」

「きき…聞いてませんよそんな事!」

「つうかパンツだけはきゃいいってもんじゃないぞ」

「それにしても大きな穴開いちゃったね。どうする?この穴」

「ふっ…アイムソーリー。お詫びにユー達をハッピィな地底王国に招待して差し上げます」

「地底…ですか?」

「はい」

大モグラのモッ君は名無しさんの言葉に頷き、その穴に入るよう促した。
パプワとチャッピーはノリノリのようだが自分はあまりそうでもない。
名無しさんが何か危険な目に遇ってしまうのではと思うと気が気ではないのだ。
そんな自分の気も知らず、名無しさんもまた乗り気で穴に降りようとしていたので、シンタローは溜め息を吐き出しながら先に自分が地底に降り、名無しさんに手を貸してやった。






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