お姫様と殺し屋

□episode8
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「名無しさん、シンタローを起こすぞ」

「わう!」

「起こすのはいいけどそれは何?」

「まあ、見てのお楽しみだ。た〜ね、種」

「わ〜う、わう」

「種植え、種植え。チャッピー、水!」

名無しさんがパプワ達が植えた種を見ていると、地面から唇がついた花が開花しそれがシンタローの体に巻き付いていった。
パプワの頭の中では、シンタローを普通に起こすという言葉はないのだろうか。
まあそれがきっとパプワなりのシンタローへのコミュニケーションなのかもしれないが。
名無しさんがシンタローに視線を向けると、思った通りシンタローは悲鳴を上げながら布団から起き上がった。

「どぅわぁぁぁぁ!!」

「おはようシンタロー!」

「おはようじゃねえよ!!こんな朝早くからなんだよっ」

「おはよう、シンタローさん。あのね、何だか外の様子が“また”おかしいの」

「外?それにまたって…」

「いいから見てみて」

名無しさんに手を引かれシンタローが外に出てみると、確かに外の様子がおかしい。
魚が水上ではないのに、連なって泳いでいたり鰐と木が喧嘩していたりカブトムシや麒麟が地面に突き刺さっていたり。
シンタローが汗を流しながらその光景を見据えていると、向こう側からタンノとイトウが走って来るのが見え、シンタローは思わず眉間に皺を寄せてしまった。

「パプワく〜ん!シンタローさんに名無しさんちゃ〜ん!!」

「おお!イトウ君にタンノ君!」

「大変よぉパプワ君!」

「パプワ島の生き物が皆変になっちゃったのよぉぉぉ!」

「お前ら自分の姿をわきまえい!」

「しっ…失礼ねぇ」

「シンタローさん…確かにぬらぬらしてぴっちぴっちしているけどそれは言い過ぎだよ」

「あんたも失礼ね!」

「シンタロー、名無しさん!後ろを見ろ!」

「え?あ…」

「こ…これは…桑田と書かれたヘリグロヒキガエルに清原と書かれたマレーバク!」

「ああっ、桑田君が投げる!」

「マレーバクの清原君も構えたぞっ」

「おお!清原が打った!」

「これで西友はバーゲンだ!!」

「実況してる場合じゃないでしょ!」

「…行数を使ってしまったが異常事態だという事は良く分かった」

「読者の皆さんはカンカンね」

「シンタローさん。これ、前にも同じ事あったよね?」

「ああ。こんな事が出来るのは奴しかいない!出て来いミヤギ!!」

シンタローと名無しさんが勢い良く後ろを振り返ると、そこには自分達の思った通りミヤギが不敵な笑みを浮かべながら立っていた。
どうしてミヤギが動けるようになっているのか。
そういえばこの間のパプワの雨乞いの踊りで三日三晩雨が降り続けていた。
きっとそのせいで筆で書かれた文字が落ちたに違いない。
二人は顔を見合せ頷き合ったあと、再びミヤギに視線を戻した。





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