お姫様と殺し屋
□episode7
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「ほらほら、じっとして。名無しさん、チャッピーの事ちゃんと抑えててくれよな」
「うん」
「洗濯洗濯〜」
名無しさん達は、チャッピーを洗ってやっていた。
というのも、犬だという事もあり、どうしても毛玉が出来てきてしまうという事情があるからだ。
嫌そうに鳴き声を上げるチャッピーに名無しさんはごめんねと言いながら、チャッピーが逃げてしまわないようにその体を抑えていた。
「綺麗になって良かったな、チャッピー!」
「わお〜ん!」
「いや、待て待て。ああ、ま〜だ毛玉が残ってんな。床屋の薫ちゃんの所行って切って貰うか」
「床屋の薫ちゃん?シンタローさん」
「なんだ?」
「前に私と髪の毛の話をしていた時に、この島には床屋はないって言ってなかった?それに薫ちゃんって誰」
「ごっ…誤解すんなよ名無しさん。床屋がねえって言ったのは、あんな所で髪を切るだなんてありえないと思ったからだしそれに薫ちゃんってのはザリガニなんだ。な?やましい事ねえだろ」
「ならその時に言ってくれたら良かったじゃない。やっぱり怪しい」
「名無しさん…目が座ってんぞお前。とにかく落ち着けって」
名無しさんがシンタローにじりじりと近付いていると、どこからともなく音楽が流れ始めたので名無しさんは動きを止め、その音に耳を傾けた。
そうすると、宮城道雄の名曲の春の海の琴の調べが聞こえてきたので自分が怒っていた事などすっかりと忘れ、シンタローに目配せをすると、シンタローもそれに頷き外へ駆け出していった。
「何者だ!」
「ふんっ…ガンマ団No.1の男が犬洗いして女にへこへこしているとは…哀れどすなぁシンタロー」
「だ…誰なの?」
「ご無沙汰どした!久々登場ガンマ団第4の刺客祇園仮面アラシヤマ!!」
「帰れ」
「おお゛!!軽ぅあしらわはるとっ!!せやけどこの必殺技をくろては黙っとくわけにはいきまへんどっしゃろ!おたべやす!京都名物おたべ攻撃!!」
「チィッ…!」
「きゃっ!」
「いや〜ん!ニッキ臭いわよぉぉぉ!!」
「イトウ…何故ここに居たんだ」
「チッ…よけはったな。せやけど今度ははずさへんで!!」
「逃げろ!名無しさんとパプワ!!」
「はっ…はい!」
「どこまで逃げはっても無駄やあ!!」
シンタロー達は何を思ったか沼の前で立ち止まり、口端を上げながらアラシヤマを見据えていた。
それにしても追い詰められて沼にも飛び込んで逃げず、しかも笑っているだなんて流石ガンマ団No.1の男といった所か。
しかし女子供がいては流石のシンタローも自分には何も出来まい。
アラシヤマは余裕の笑みを浮かべながらシンタロー達を見据えた。
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