お姫様と殺し屋

□episode6
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シンタローはパプワハウスまでの道を必死に走っていた。
というのも、夕飯の材料の調達に出掛けたまではいいが帰りがけにイトウとタンノに見つかり追い掛けられているからだ。
何故こんなナマモノに追い掛けられ必死に逃げなければならないのか。
どうせ追い掛けられるのならば、自分の可愛い恋人の名無しさんに追い掛けられたいものだ。

「シンタローさぁん!遊びましょうよぉ〜!!」

「煩え!俺は夕飯の支度があるんだよっ」

「待ってよぉ!」

「来るなぁぁぁっ!」

イトウとタンノにもう少しで追い付かれてしまうというその瞬間、空から何かが落ちてきたのでシンタローは目を見張ってしまった。
落ちてきたのは、まだ幼い少女とアザラシでシンタローは何なんだ一体と思いながらも一人と一匹の元へ近付いていった。

「ごめんあそばせ。お怪我ありませんでしたか?」

「何者だお前は」

「くり子と申します。ところでお願いがあるのですが…」

「お願い?」

「はい」

願いがあると言われたシンタローは、最初こそ眉間に皺を寄らせていたが、まだ幼い少女に対してこんなにも牽制をかけなくてもいいだろうとそう判断し、少女の話に耳を傾けた。
一方、その頃パプワハウスではパプワとチャッピーはんばば踊りを踊っており、それを名無しさんが洗濯物をたたみながら微笑ましく見ていた。

「ふふ、元気だなぁパプワ君は。それにしてもシンタローさん遅いな」

「ただいま。うぉーいパプワ」

「家に入る時はちゃんとノックをせんか」

「は〜いはいはい!お前に客が来てるぞ」

「なに!?」

「初めまして、くり子と申します」

「おかえりなさいシンタローさん」

「ただいま、名無しさん。しっかしいつ見ても可愛いなお前は。さっきまでナマモノ見てたから癒されるぜ」

「そっ…それはおいといてあの子は?」

「ああ、困ってたから連れて来たんだ」

二人がくり子に視線を向けると、くり子は頬を赤く染めながらパプワに見惚れており、これはと思った二人は微笑みあった。
パプワの表情は読めないが、くり子は恐らくパプワに一目惚れをしてしまったに違いない。
だからあんなに頬を赤く染めたまま動けなくなってしまっているのだろう。
名無しさんはくり子に話し掛けようとしたのだがそれと同時に、くり子がパプワを真っ直ぐに見据えながら口を開いた。

「分かりました。お嫁に参ります!」

「何が分かったんだお前…。それよりうちになんの用だ」

「まあ!そうですわ、私ったら。道に迷っている間にうちのツトムが暑さで弱ってしまいましたの。よろしければ暫く休ませて頂けないかしら」

「かまわんぞ」

「まあ、本当ですの!?」

「その代わり、今日からお前も友達だ!」

「そんな…まだ手も握っていないのに」

「何かを勘違いしとるな、お前…」

「ふつつか者ですがよろしくお願いします」

「うむ!」

「それでは私が夕飯の用意をいたしますわ」

そう言って袖を捲り、包丁を構えるくり子を名無しさんは微笑ましく見ていた。
のだが、そのまな板に乗せられていたのはタンノで名無しさんらしくもなくシンタローと共にずっこけてしまった。
いや、確かに一応タンノは魚だが流石にそれを食べる気にはなれない。
シンタローも名無しさんと同じ心情だったらしく、作り笑いを浮かべていた。



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