お姫様と殺し屋

□episode4
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南海に浮かぶ絶海の孤島パプワ島。
ここでは今朝も穏やかな時間が流れていた。
まだ夜明け前という事もあり、シンタローと名無しさんは気持ちが良さそうに寝息を立てていた。
だが、それとは逆にパプワとチャッピーは既に起きており、何かを企んでいるかのように顔を見合せたあとシンタローの枕元に立った。

「えい」

「どぅおぇぇぇ!!なっ…なんだこのでけえクワガタはっ!」

「なな…なに!?またガンマ団?」

「いつまで寝とるんだ。さっさと起きんかい」

「まだ夜明け前だぞ!」

「何を言う。このクワガタ君はとっくに樹液をすすってる時間だぞ!」

「あ、本当だ」

「甲虫と一緒にするな!それに名無しさんちゃんも呑気に感心しとる場合か!!」

「とにかく今日は大切な日だから早起きして貰うぞ」

「大切な日?」

「お盆だ!」

「へえ、パプワ島にもお盆ってあるんだね」

「ああ。行くぞ」

「あ、ちょっと待って!準備するから」

名無しさんはシンタローが気を利かせてパプワハウスの中に作ってくれた少し大きめの衝立の裏に入り、慌ただしく着替えを済ませた。
シンタローは本当に気が利き過ぎる位気が利く人だ。
女である自分が住みやすいようにとこうして衝立を作ってくれたり、ちょっとした小物入れを作ってくれたり。
ここまで器用過ぎると、殺し屋ではなく実は職人なのではと思ってしまう。
名無しさんは、髪の毛を1つに束ねたあと衝立から出てパプワとチャッピー、そしてシンタローと共にお盆会場があるという場所へ向かっていった。

「へえ、今日はポニーテールなんだな」

「うん、この方が邪魔じゃないし楽だし。それにしてもシンタローさんの髪の毛はいつでも綺麗だよね。何かお手入れしてるの?」

「いや、特にしてねえよ。意識して伸ばしてる訳じゃねえけどここに床屋なんてねえから切りたくても切れなくてよ」

「え、切っちゃうの勿体無いよ!そんなに綺麗でよく似合ってるのに。それにその方が格好良いと思うよ?」

「かっ…格好良い!?な…名無しさんちゃんがそう言ってくれんなら伸ばしててもいいかな」

「着いたぞ。ここだ」

「ここ?おお゛!!な…なんだこのヤグラはっ!」

「凄い!本格的ね」

「やっほーパプワ君」

「やあ、イトウ君。皆揃ってるかい!?」

「ええ、準備オッケーよ」

「おい、パプワ。この盆踊り会場みたいなのはなんだよ」

「降霊場だ」

「こ…降霊場?それってもしかしてお化けが出てくるの?」

「はっはっは!名無しさんは中々怖がりだな」

降霊場と聞いた途端、顔を青ざめさせる名無しさんを見据えながらシンタローはほんのりと顔を赤く染めていた。
あれだけ気が強く、ガンマ団の刺客達にも顔色1つ変えず強気な割にまさかお化けが怖いとは女子らしくて中々可愛い所があるではないか。
もしもこの場に本当にお化けが出て来たら、大丈夫だと言いながら自分に抱き寄せてやるのもいいかもしれない。
シンタローがそんな邪な事を考えていると、自分の後ろかろ嫌な気配が感じられ、鳥肌を立たせながら後ろを振り返った。





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