お姫様と殺し屋
□episode9
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「わう!」
「所詮は獣くわぁぁぁ!!」
「はっはっは、ありがとうワンちゃん。でもこれじゃないんだよ」
「へ?」
「シンタロー、耳を貸せ」
「なんだよ」
「安心しろ。本物は僕が隠してある」
「ま…マジか!でかしたぞパプワ。それで本物は何処にある」
「ここだ」
「ここ?」
パプワが指差した先を辿っていくと、そこにはイトウがおり、明らかに不自然に目が1つ増えていたのでシンタローはまたしてもズッコケてしまった。
こいつを信用したのが馬鹿だった。
なんだ、あの不自然な目は。
それにマジックが見たら一目でそれが秘石だとバレてしまうではないか。
シンタローはマジックに見付かってしまうのではとハラハラとしてしまっていた。
「総帥!何処を探しても見当たりません」
「よく探せ!」
「馬鹿たれだらけ…」
「シンちゃん、いい加減にしなさい。パパにだって我慢の限界があるんだからね」
「知らねえよ」
「ふうん、そっ!」
「ぐあっ…!」
「シンタローさん!シンタローさんのお父様、何をなさるんですか!?」
「躾だよ。全くいくつになっても我が儘なんだから。昔はあんなにパパと仲良しだったのに…」
「クッ…そ…そんな昔の事なんて忘れちまったぜ」
「そうか。なら思い出させてやろうか」
「なに…?」
「ほおら皆、このテレビを観てごらん。シンちゃんってば怖い話をするとす〜ぐお漏らししちゃってたんだよ〜」
「やっぱお前なんか大嫌いだぁぁぁ!!」
「あ…あの、シンタローさんのお父様…」
「はっはっは!シンタローさんのお父様だなんてそんなよそよそしい。パパと呼んでくれたまえ」
「え、いや…」
「そう堅苦しくならなくてもいいじゃないか。ほら、呼んでみなさい」
「で…ではあの…パパ?」
「いいねいいね!うちには男の子しか居ないから女の子にそう呼ばれてみたかったのだよ!しかも君のような可愛い子に呼ばれるなんて堪らないな!」
「…シンタローさん。本当にこの方が貴方のお父様なの?確かに、性格は似ているようだけど」
「俺とこいつを一緒にすな」
「それで?名無しさんちゃんは何が聞きたいのかな」
「あ、はい。あの、おと…」
「パパと呼んでくれないと質問には答えられないな〜」
「…パパ、あの」
「なんだい?」
「もしよろしかったら“秘石”が何かを教えて頂いてもよろしいでしょうか」
名無しさんはマジックを見据えた。
ここで、秘石の事に詳しそうなこの人に聞いておけば何か分かるかもしれない。
例えば、秘石眼の事や自分の家に似たような石がある理由などが。
幼い頃に教育係から確かに教わった筈なのに、あの頃はそれがあまりにもつまらなさ過ぎて真面目に聞いていなかったのだ。
まさか、それを後悔する日が来るなんて思ってもみなかったが。
真剣な表情を浮かべる名無しさんにマジックはいいだろうと呟きながら頷いてみせた。
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