苛めたい位君が好き

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「どうしたんすか部長も不二先輩も」

「クスッ…秘密だよ。ね、手塚」

「ああ。こればっかりは教えてやる訳にはいかないな」

「あっ!忘れるとこだったぜ」

「な…なんだい桃。急に大声だしてびっくりするじゃないか」

「俺達名無しのさんにまだ自己紹介してないっすよ!」

「そういえばそうだな。名無しのさん、俺は青学テニス部副部長の大石秀一郎っていうんだ。よろしくな」

「俺は河村隆。よろしくね名無しのさん」

「フシュゥゥ…海堂薫っす」

「俺は桃城武!桃ちゃんって呼んでくれな」

「…越前リョーマ。名前、好きに呼んでくれていいっす」

「俺は乾貞治だ。よろしく頼む」

「そういえばちゃんとした俺の自己紹介をしていなかったな。俺は青学テニス部部長の手塚国光だ。合宿中色々と世話になると思うがよろしくな」

「僕の紹介は大丈夫だよね。ちなみに、グラウンド走っているのは菊丸英二だよ。良かったら覚えてあげてね」

「あ…あの、皆さん丁寧にご挨拶をして下さってありがとうございます。もう少しゆっくりと話したいのは山々なのですが私、そろそろ帰らなくては行けなくて…」

「そうなんすか?まあ、それなら仕方ね〜な、仕方ね〜よ」

「まあ合宿もあるしその時にゆっくり話せばいいさ」

「…本当にすみません。あ、それから越前君」

「なに?」

「あの…貴方に日吉君から伝言があります。次は負けないとの事です」

「ふ〜ん、そうなんだ。それじゃ俺からもまた俺が勝つから精々練習頑張ればって伝えておいてよ」

「はい、そのように伝えておきますね」

別れを惜しんでくれる部員達に本当に申し訳ないと思いつつも、名無しさんは軽く頭を下げコートをあとにしていった。
それにしても菊丸はまだグラウンドを走っているのだろうか。
もしも自分が帰るまでにもう1度会えたら、きちんと挨拶をしたかったし何より自分の勘違いでグラウンドを走る事になってしまった事を謝りたいと思っていたのだが。
名無しさんがそんな事を考えていると、後ろから手塚と不二が追い掛けてきたので何事かと思い足を止めた。

「て…手塚さんと不二さん、どうされたんですか?」

「君に伝え忘れた事があったから伝えにきたんだ」

「あいつらは…いや、部員達は決して悪気があってお前にああいう事を言ったのではない」

「え?」

「何て言えば伝わりやすいかな。つまりデリカシーがちょっと足りないだけで、本人達はいたって性格が良いから名無しさんちゃんに皆を嫌って欲しくないんだよ」

「もしかしてそれを伝える為にわざわざ追い掛けてきてくれたんですか?」

「うん、そうだよ」

「お前に青学テニス部を誤解して欲しくないからな」

「ふふ…大丈夫ですよ」

「え?」

「嫌いにもなりませんし、誤解もしません。先程の自己紹介の時に思ったのですが皆さん意外と照れ屋なので、あえて色々と言ってしまうのかなと自分なりに解釈してみましたので」

「そうか…それならいいんだ。引き止めてしまってすまなかったな」

「いいえ、大丈夫ですよ」

「気を付けて帰れよ」

「はい。ありがとうございます」

「名無しさんちゃん。ちょっと耳貸してくれないかな」

「は…はい。あの…?」

「僕、名無しさんちゃんの事とても気に入っちゃったんだ。眼鏡掛けてる君もいいけど、外した姿もとっても魅力的だし性格も可愛いし」

「ふっ…不二さん…」

「何より君の泣き顔が凄く良かったよ。クスッ…もっと苛めてあげたい位にね」

名無しさんの耳元でそう甘く囁いた不二は、四つ折りにされた小さな紙を手に握らせ、何事もなかったかのように自分に手を振り手塚と共にその場から去っていってしまった。
名無しさんが頬を赤く染めながら渡された紙を広げると、そこには不二の携帯番号とアドレスが書かれていた。
仲良くなれたのは素直に嬉しい。
けれど先程のような事をまたされても困る。
友達としてならいいが、自分が男性として見れるのは跡部景吾という人だけだ。
しかしながら、自分と跡部の想いは通じ合っていると分かってはいるものの、まだきちんとした返事は返ってはきていないし、正式に付き合っている訳でもない。
早く跡部から返事を聞きたいものだと思いながら名無しさんは、自分を待っていてくれている車に向かって歩き出した。





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