お姫様と殺し屋
□episode10
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シンタローは砂浜に寝転がりながら空をぼんやりと眺めていた。
というのも、自分が持ち出した秘石の秘密について、先日このパプワ島にやってきた父親であるマジックが話ていた事を思い出していたからだ。
“2つの秘石を手にした者は世界を制す”
参った。
まさか、秘石にそんな能力があるとは思っていなかった。
シンタローがそんな事を考えながらパプワ達に視線を向けると、なんと秘石でキャッチボールをして遊んでいるではないか。
「ほ〜れチャッピー!」
「わうわう!」
「わあ、二人共上手〜」
「粗末にしないで我が家の家宝!!…ったく、大切にしなきゃ駄目だろう!この石にはすげえ力が隠されてんだ。それさえ解明できれば俺は…俺は…」
「シンタローさん…?」
「大金持ちあーんどコタローと名無しさんと大ハッピー!!」
「所詮は金と女と弟か。名無しさん、お前は本当にこんな欲まみれの男が“こいびと”とやらでいいのか」
「う〜ん…ちょっと考えちゃうな」
秘石の能力を手に入れたらどうするこうすると妄想し、顔を緩ませるシンタローを見ながら名無しさんは溜め息を吐き出していた。
コタローと自分の事を考えてくれるのは素直に嬉しい。
だが、マジックの話を聞いて尚まだそんな事を言うのかと少しだけ呆れてしまう。
まあ、シンタローらしいといえばらしいが。
名無しさんはやれやれという風に首を左右に振ると、パプワも同じように思っているのか、シンタローを冷めた視線で見据えていた。
「メーシめし!」
「わ〜うわう!」
「あー!分かった分かった!」
「もう出来たからちょっと待っててね」
「大盛りな!大盛りっ」
「はーい!はいはい!」
「ちゃんと残さず食べてね」
名無しさんとシンタローが器にご飯を盛り付け、食卓に並べようと振り返ると、パプワとチャッピーの間にいつの間にかちゃっかりと蛙が座っていたのでシンタローはずっこけ、名無しさんは目を丸くさせてしまった。
「どこのどなただ!この両生類はっ!!」
「げ…ゲロ」
「お、落ち着いてシンタローさん」
「申し遅れました。私、コモリマダラガエルのホサカと申しますゲロ」
「ホサカさん?」
「とりあえず話は後という事で…私にも大盛り1丁!」
「1丁じゃねえっ!」
「ホサカ君はな、去年奥さんに逃げられて赤ちゃんと2人で暮らしているんだ」
「へ…へえ。大変なんだね」
「蛙のヤモメか!」
「じ…実は今日はその子供の事でお願いがありますゲロ」
「お願いですか」
「はい。今日1日、私は仕事に出ますので子供を預かって欲しいんですゲロ。替えのオムツもたーんとありますから」
「何がたーんとだ。まっ、いいか。ガキの扱いにゃ慣れてるし」
「ホサカさん、お子さんをお預かりしますよ」
「えっ!本当ですか!!すぐに連れて参ります!」
そう言って慌ててパプワハウスを出ていくホサカの後ろ姿をシンタローは眺めていた。
知っての通り、自分はコタローの事を赤ん坊の時から世話してきていたし、今はこうしてパプワ達の面倒も見ている。
だからたった1日預かる位わけないのだ。
それに、名無しさんと新婚のような甘い時間を過ごせるかもしれない。
シンタローが再び妄想に顔を緩ませていると、ホサカが戻ってきたので、そちらに視線を向けた。
だが、その赤ん坊を見た瞬間シンタローは思い切り目を見開いてしまった。
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