短編・中編
□あなたを私に込めて(You in My Heart)
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said サナ
「眠れへんなぁ」
忙しすぎるスケジュールのせいで起きることに慣れてしまったせいなのか。
それともさっきスタッフさんに貰って飲んだコーヒーのせいなのか。それとも、、、
少し考えてみたけどやっぱりどうでも良くなってしまった。
今泊まっているのは撮影で来ている日本のタワーホテル。
マネージャーさんいわく、良い値段らしい。
ダブルベッドから静かに起き上がり、私は小さな出窓のほうに向かった。
横にスライドする式の窓を開けて空を見上げれば輝く星たちが無数にも肉眼で見ることが出来た。
「日本でもこんなに星が綺麗に見えるんやなぁ。ももりんにでも教えてあげよ」
なんて呑気な考えをしながら、心の中では自然にきらめく星たちを一つ二つと数えていた。
今は1月の終盤で日本といえど夜はそれなりに冷えて寒い。
きっと6年前の私も日本の1月の寒さに震えあがっていたと思う。たしかやけど。
でもあれから6年経って
私はその6年間を極寒の韓国で過ごした。
だから日本の一月の寒さなんて、なんてことない。
窓から吹き込んでくる冷たい空気にそっと目を閉じていろんなことを思い出していた。
「スー、スー」
風の音と一緒に私の耳へと入り込んできたあなたの愛おしい息づかいが、私の意識を自然にダブルベッドのほうへと向かせた。
私と同じベッドで寝ている彼女は、一切乱れぬ寝相と規則正しい寝息を立てて気持ちよさそうに寝ている。
普段はメイクや髪形で大人っぽい雰囲気だけど
すっぴんで眠っている姿はだれがどう見てもかわいい末っ子だと思う。
開けていたスライド式の窓を閉めて
私は彼女のほうへと向かった。
気持ち良さそうにスースー眠る彼女に
「サナは寝れないのにツウィはぐっすり眠っちゃって、、、もう」
なんて軽く悪態をついてみる。
自分が寝れないから悪態をついてるわけじゃないからね、と軽く心の中で付け足し
ツウィが使っている掛け布団を少し上にあげて
その隙間からベッドに入り込んだ
寝っ転がりながら頬杖をついて、気持ちよさそうに眠るツウィの寝顔をじっと観察する。
練習生の時は全く持って関りがなかった
初めて深く関わったのはSIXTEENの時
そして仲良くなったのもSIXTEENの時
そういえばこんなサナを尊敬しているなんて言ってくれてたっけ
あの時は16歳なりたてだったのに
今はもう19歳かぁ…
仲の良さも、メンバーとしての大切さもこの3年間何にも変わってない。
むしろあの時よりも気を遣わなくなったし、絆も深くなったと思う。
でもただ一つだけ、私の中で変わってしまったと思うのは
愛おしいという気持ちだけ。
何故なのか、いつからか、
メンバーとして愛おしいという気持ちだけではなくなってしまった。
妹として、という表現もなんだか違う。
「じゃあなんなんやろ?」
、、、そこで考えるのをやめた。
どうでも良くなったからじゃない。
その答えは出していけないものだと本能的に感じ取ったからだと思う。
愛おしいあなたの息遣いを耳に
サナは眠りの世界に入り込んだ