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□春雷
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ラクサスと仕事に来ていた。気まずくなったりすることへの恐怖だったりとか、最近のギルド内での態度に不信感はあったけど何よりも彼と久しぶりの仕事に高揚していた。
依頼は思っていたよりもあっさりと終わった。ラクサスは相変わらず強くて私もまだまだ頑張らないと、と実感させられたけど彼とのコンビネーションはとても良かったと思う。久しぶりでも、体が覚えていた。ずっと一緒に仕事をしていた時を思い出して懐かしさに泣きそうになったけど。
今はホテルをとって泊まっている。明日帰る予定で今日はゆっくりしようという話になったのだ。今更同じ部屋で眠ることに抵抗はない。うんと小さい時から一緒だったのだ。しばらくは抱かれることもないだろうし。仕事後のシャワーを浴びていると何か言い争うような声が聞こえる。急いで出てラクサスのもとへ向かうとミラとラクリマで話をしていた。

「だってそうだろ?じじいが始めた戦争だ。なんでオレたちがケツを拭くんだ」

嫌な予感がする。戦争ってなに?どういうこと?妖精の尻尾が巻き込まれたの?

「ルーシィが…仲間が狙われてるの」
「あ?誰だ。そいつァ。ああ…あの乳のでけェ新人か。オレの女になるなら助けてやってもいいと伝えておけ。それとじじいにはさっさと引退してオレにマスターの座をよこせとな」
「あんたって人は…」

ミラの悲痛な声を聞いてもカナの怒りの声を聞いても意に介せずむしろ愉快そうに口を歪めて下品に笑う、私の目の前にいる人は誰だろう。

「オイオイ…それが人にものを頼む態度かよ。とりあえず脱いでみたら?オレはお色気には弱い…割りやがったな」

ラクサスはこんな目をしない…

「今の連絡は…?」
「ああ、幽鬼の支配者の連中にやられたらしい。情けねぇなぁ。」

この人は誰?なぜ仲間が傷ついて笑っていられるの?なぜギルドを仲間を守ろうと必死に戦った人達を侮辱するような言葉が言えるの?手足の感覚がなくなっていく。血の気が引いていくのが分かる。
なにか言おうと思うが喉がはりついて声がでてこない。頭がうまく回らない。私は勘違いしていたのだ。ラクサスはどんなに変わってもラクサスだと。彼はギルドを誰よりも愛していた。それだけはきっと変わらない。口でなんと言おう芯の部分は変わらないと思っていたのだ。かろうじて、レイナは帰るということだけを告げて飛び出してきた。
彼との仕事で浮ついていた気持ちは一気に見る影もなくなり、胸を占めるのは苛立ちだけだった。それがラクサスに対してなのか幽鬼の支配者に対してなのかそれとも自分に対してなのか。とにかく早く帰らないと。
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