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□春雷
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人通りに賑わうマグノリアの街でも人目を引く美しい女が靴音を響かせながら歩いている。胸下の位置で切りそろえられた烏羽色の髪を揺らし歩く彼女は華奢で儚い雰囲気をまとっているが、王国最強のギルドと評されることもある妖精の尻尾の一員であった。顔なじみの街の人と時折言葉をかわしながらギルドへ向かってまっすぐに歩く。
やがてついたギルドから聞こえる喧騒にクスッと笑みを零しながら扉を開けた。先ほどよりもさらに大きくなった喧騒と、扉越しでは感じれなかった酒の匂いと熱気にようやく帰ってきたと笑みを深くする彼女に気づいたマカオが声をかける。

「レイナ!久しぶりじゃねぇか」

周りにいたギルドのメンバーもレイナの帰還に気づき声をかける。

「おかえり」
「半年ぶりじゃねぇか?」

「ただいま。ええ、ちょっと仕事が長引いちゃって」

半年ぶりであっても変わらず話しかけてくれる面々に心を温かくしながらミラのもとへ今回の依頼の報告へ向かう。

「ミラちゃん。ただいま」
「あら。おかえりなさい。久しぶりね」

報告書をだすついでに、昼ごはんを頼む。カウンターに座って待っていると見慣れない顔があることに気づいた。

「ミラちゃん、あの子新人さん?」
「ああ、ルーシィね。この間入ってきたの。ルーシィ!!!!」

ミラの呼びかけにルーシィが走ってくる。わざわざ来てもらうことになって申し訳ない。

「ルーシィ、レイナよ。仕事で今までギルドにいなかったの」
「よろしく、ルーシィちゃん」
「ルーシィです!よろしくお願いします!」

ガバッと頭を下げられて、私も思わずそれにならう。ミラにクスクス笑われて、恥ずかしくなりながら顔をあげるとルーシィも似たような顔をしていた。2人で顔を見合わせて笑う。良かった、仲良くなれそう。それにしても新しい仲間ができるのは嬉しいことだ。
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